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溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

子会社への出資、融資はどっちが得なのか?【村田製作所の例】

www.nikkei.com

村田製作所は2017年3月期に中国とフィリピンの子会社に合計150億円を増資する。一方で本社からの円やドル建ての貸し付けを減らし、「新興国通貨安による為替差損のリスクを減らす」(藤田能孝副社長)という。17年3月期は為替相場の変動リスクを考慮して2社の資本を増やすことにした。』

 

以前も類似の記事を投稿したが、為替が、特に円高方向へ、不安視されるとこのようなケースが続くとも思われるので・・・

 

親会社から参加の子会社などへの資金供与の方法は大きく

貸付(融資)投資(出資)がある。

それぞれにメリット・デメリットがあるが、村田製作所の例は、このうち為替リスクに対する対応を目的としたものだ。

 

『円やドルに対して現地通貨の下落が進めば子会社側の貸借対照表上は負債が膨らみ、連結決算では為替差損が発生する。』

 

例えば、子会社に対してドル建ての貸付金1億ドルを融資したとする。貸付時の為替レートが@100円で、期末時点には@90円に円高となると、親会社の個別のP/Lでは、10億円(1億ドル*(@90円-@100円)の為替差損が発生する。そして、この為替差損10億円は連結決算でもそのまま引き継がれる。

ところが、同じ1億ドルでも、子会社に対して融資ではなく出資という形をとると、

親会社の個別決算では、関係会社株式は出資時の為替レートで換算されるので出資後の為替変動に関わらず為替差損益が発生しない

そして、連結決算のために子会社の現地通貨建ての決算書を日本円に換算する際にも資本金(親会社の出資に相当)は出資時のレートで換算される。これに対して、それ以外の資産や負債は基本的に期末時点の為替レートで日本円に換算される。

例えば、子会社の総資産が1.5億ドル 負債0.5ドル 資本1億ドルとする。

親会社の出資時の為替レートが@100円、期末時の為替レートが@90円とすると、

総資産1.5億円*@90円=135億円 ←B/S左側合計

負債0.5億円*@90円=45億円、資本1億円*@100円=100億円 

             ←B/S右側合計145億円


となり、B/Sの左右の金額が不一致となる。

そこで、資本の項目に『為替換算調整勘定』△10億円 足しこむことによって、右側合計を135億円(145億円ー10億円)というように調整するのである。

このように為替換算調整勘定はB/Sの左右合計を調整するための帳尻合わせの勘定科目ではあるが、その実態は子会社への出資の為替変動による増減を示している。つまり、仮に出資でなく融資で資金提供した場合には『為替差損益』となった金額に相当する。

 

海外子会社に対して、同じ金額を資金提供する場合であっても、その形態が

融資か出資かによって親会社(ケースによっては子会社)の個別決算、親会社の連結決算への数字の表れ方が変わるのである

何故出資の場合は為替変動の影響を決算の都度、損益に反映させないかと言うと、親子間の支配従関係が継続している限りは親会社にとっての子会社への投資の成果(成否)は未だ認識すべきでないという考え方による。したがって、子会社への出資を売却したり、清算する場合に、為替換算調整勘定は実現、つまり親会社のP/Lに影響を与えることになる(売却損益や清算損益に巻き込まれる)。

 

為替はいつも読めないが、その動向に対する不安が大きくなるほど村田機械のような対応を取る会社は増えると思われる。特に海外展開の規模が大きい会社は、1円の為替変動親会社の個別そして連結決算数値に与える影響も大きくなるためなおさらだろう。