溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

ICOの会計処理ってどうなるの!? 【メタップスの例】

www.nikkei.com

『仮想通貨技術を使った資金調達

(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)

に関する会計処理問題が浮上している。きっかけが15日に決算発表した、決済代行サービスなどを手掛けるタップス。昨年ICOを実施したが、会計処理を巡り監査法人との協議が難航。深夜に決算を発表する異例の事態となった。』

 

とのこと。会計処理を巡って会社と監査法人が揉めている、と聞くと、

所謂、”不適切な会計処理”

を思い浮かべるが、このケースは事情が異なる。

というのも、拠り所になる

会計ルールが整備されてない

のだ。

ルールブックが無ければ、〇✖を判断する根拠が示しにくい。

 

会計法(ルール)は、財産法の1つではあるが、広い意味で社会が円滑に機能する

ための常識や価値観を明文化したものであると思うので、ルールブックが無くても

原理原則に立ち返って、本来どうあるべきか?という観点から考えれば良い、

という意見もあるが、そうは言っても会計処理如何によって業績が左右される会社

からすれば、(特に意に沿わない会計処理を監査法人から提示される場合)

依拠すべきルールブックが無いというのはどうにも具合が悪い。

 

さておき、何を揉めた(記事には、協議、とあるが)かというと、

ICOの会計処理』

とのこと。

 

『ICOでは企業などが「トークン」と呼ぶデジタル権利証を発行。事業に賛同する投資家はビットコインなど流通性の高い仮想通貨で代金を払う。メタップスの韓国子会社の場合、昨年のICOで仮想通貨イーサリアムを当時のレート換算で約10億円調達した。』

 

ICOは、企業などがビットコインイーサリアムなどの仮想通貨と交換できるトークンを発行し、新規事業などに必要な資金を集めることを言う。

 

会社の新規株式公開をIPO(イニシャル・パブリック・オファリング)言うが、

株券の代わりに、トークン』を発行するイメージだ。

 

『メタップスの場合、ICOで得た資金を貸借対照表(BS)上の負債

として取得時価格で計上した。だが前例は少なく「どの勘定科目に計上するかを含め、見当がつかない」(公認会計士)との声もある。』

 

実は、依然として監査法人と協議中とのことで、平成30年8月期の第1四半期(9-11)の決算発表がされていないので詳細は不明だが、記事から類推すると、

会社の会計処理は

 

(借)現金及び預金 *** /(貸)前受金 ***

 

と思われる。

 

で、IPOの類似取引ならば、資本取引(会社と株主の取引)だから、本来は

 

(借)現金及び預金 *** /(貸)資本金 ***

 

とするところを、『ICOについては法律上の位置づけが明確でない』、つまり、

ICOにより調達したおカネが会社にとって資本と認識してよいかどうか判然としない、ということでとりあえず手形借入金的に負債勘定で処理したのかと思っていた。

 

ところが、その後、会社のプレスリリースを読んで驚いた・・・

 

☟会社のプレスリリースはこちら

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1545014

 

プレスリリースによれば、

 

『2. 会計処理について  本ICO は、仮想通貨 Pluscoin(PLC)の販売であり、本 ICO において受領した対価は将来 的には収益として認識いたします。但し、収益認識の方法やタイミングについては引き続 き協議中ですが、本四半期においては、受領した対価の全額を負債(前受金)として計上 するのが妥当であると判断しております。』

 

現状の前受金での処理は暫定で、将来的には、

『収益』として処理するとのことだ。

 

ううう・・・

 

僕は、ICOを何らかの事業(計画)に対して必要なおカネを集める既存のIPO

などに代わる手法として認識していたが、会社はそう考えてはいないようだ。

 

IPO的に考えれば、まだ実現していない(これから実現する)事業計画に対しておカネを出すのは投資行為であり、会社から見れば資金調達行為だ。先述したが、

これは資本取引と言って、それ自体から損益は発生しない

そして、資本取引後のおカネを基に事業を遂行する過程で生ずる取引が損益取引と言って、これらが売上、費用のP/Lを構成する。

 

会計ルールでは、

資本取引と損益取引は明確に区分

している。

 

難しい話はわきにおいても、例えば、株主から1億円の出資を受けた会社が、その期のP/Lに株主に対する売上高1億円と計上するのは何となくおかしいと思うのではないか。

 

タップスの主張はまさにそれにあたる。

 

とはいえ、

それがオカシイとなるのは、あくまでもICOが資本取引であることが前提

だ。

確かに、現状ではICOの法的な位置づけが明確でないとのことだし、

トーク保有者の法的な権利も同様だろう。となると、ICOが資本取引なのか、

はたまた、トークンという『商品』を売って完結の販売取引なのか、

現状では判別が難しいのかもしれない。

販売取引ということであれば、会社の主張は当然だし・・・

 

どうなることか、今後の検討を待ちたい。

ICOに限らず、仮想通貨に関する法的な位置づけ、それに伴う会計処理については

またまだ今後解決すべき課題が多そうだ・・・

 

いつもそうだが、新しいビジネスが生まれるとその成長、つまり社会的な

影響力が高まるにつれて色んな課題が浮かび上がってくる。

ある意味、成長を妨げることにもなるが、それでも成長し続けるビジネス

だけが本物として確立するためのプロセスと思いたい。