溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

大塚家具のGC注記の本当の理由とは!?


www.nikkei.com

8/14に大塚家具が開示した2018年1~6月期の決算短信「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン)」が記載された。ゴーイングコンサーンGC)注記については、こちら☟に記載しているので参考にしてほしい。

globis.jp

備忘録として事務所ブログにも記載しておく。

 

簡単に言えば、近い将来会社が倒産する可能性が高いと考えられる場合にGC注記は記載される。投資家などステークホルダーにとっても極めて重要な注意喚起となるため、財務諸表の直後(注記の筆頭)に記載される。

 

近い将来の倒産リスクといっても、その大小が経営者の主観によってブレてはいけない。そこで、開示ルールでは近い将来の倒産を示唆する以下の具体的な状況を例示列挙して、これらの状況に該当する場合にはGC注記の要否を検討して判断することになる。

 

GC注記が必要となる会社の状況例】

・売上高の著しい減少
・継続的な営業損失又は営業キャッシュ・フローのマイナスの発生
・借入金等の返済の困難性
・新たな資金調達の困難性
・主要な仕入先からの与信又は取引継続の拒絶
・重要な市場又は得意先の喪失
・事業活動に不可欠な人材の流出
・ブランド・イメージの著しい悪化 等

 

財務諸表の注記は本来、財務諸表の作成責任者である会社の経営者が判断することになる。しかし、普通の神経ならGC注記は避けたいところだろう。自らウチの会社は近い将来倒産するかもしれませんよ~、と公言することになる。

対象になる会社は主として上場会社であり、監査法人の会計監査が必要になるため、実務的には監査法人が開示ルールにしたがってGC注記の必要性を経営者へ指摘、経営者と検討協議して判断に至ることになる。

 

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大塚家具のGC注記は、

営業損失やマイナスの営業キャッシュフローの継続

を主たる原因している。

 『継続的な』営業損失又は営業キャッシュ・フローのマイナスとは最短で言えば2期連続となるが、実務上は2期連続で赤字が確定してもその時点では来期計画が策定されており、

3期目が黒字計画であれば3期目の計画達成を見てのGC注記判断

となることが多い。

 

大塚家具は、

2017年12月期の決算発表時点での

2018年通期計画では

 

売上高    45,663億

営業利益   200億

当期純利益    1,390億

 

と黒字計画を公表していた。ちなみに、第2四半期までは、営業&経常赤字の計画。

ところが、当第2四半期の決算発表時点で、通期計画を以下に修正した。

 

売上高          37,634億

営業損失        5,100億

当期純損失    3,426億

 

つまり、第2四半期の業績発表時点(通期の8.5か月経過)で、

3期連続営業赤字(そしておそらく営業キャッシュ・フローも赤字だろう)が見えたため、このタイミングでのGC注記となったと思われる。

 

しかし、それ以上に要注意なのが現金(現金及び現金同等物)の状況だ。

 

会計監査の賞味期限は1年だ。

GC注記に関して言えば、仮にGC注記を記載しない財務諸表に適正意見を付した場合、その会社が1年以内に倒産すれば監査意見の適正性が問題となる。つまり、GC注記が記載されたということは今後1年以内の倒産可能性が高いという状況を意味する。近い将来の倒産というのは具体的には今後1年以内ということだ。

継続的な営業赤字や営業キャッシュ・フロー赤字ももちろん問題だが、実はそんな会社は結構存在する。2,3年の赤字では会社は倒産しないケースは多い。

 

会社の生死を分けるのはおカネだ。

出血しても輸血があれば当面生き延びる

ことができる。

 

大塚家具の最近の現金残高と営業キャッシュ・フローの状況をチェックすると以下。

 

【現金及び現金同等物期末残高推移】

         (単位:百万円)

2015年12月期   10,971

2016年12月期     3,853

2017年12月期     1,806

2018年  6月期     2,205

 

2.5年の間にざっと80億円以上のおカネが減少した。

特に、2015年から2016年にかけての現金残高の減少が目を引くが、例のお家騒動の影響で60億近い営業キャッシュ・フロー赤字に加えて配当金支払などで一気に70億の減少となった。2018年の第2四半期は保有資産の売却などで何とか少し残高を回復させているが、当第2四半期の22億という水準は、2018年の通期予想売上高で

手元流動性は約21日と1か月を切る水準だ。

 

【営業キャッシュ・フローの推移】

                                 (単位:百万円)

2015年12月期   269

2016年12月期 △5,770

2017年12月期 △4,785

2018年6月期   △2,080

 

直近2年度は、毎年50~60億の現金が事業により流出している。この調子で営業キャッシュ・フローの赤字が継続すると、いずれ手持ち資産の売却も底をつくだろうし、資本提携先など大口のスポンサーの登場無しでは

手持ちの現金がすぐに底をつく

ことは想像するに難くないだろう。

 

GC注記には、会社の状況改善策も併せて記載されている。

大塚家具では、対応策として
①店舗規模の適正化によるコスト圧縮
②人員再配置によるコスト圧縮
③売上改善策
④安定的な財務基盤の確立

その中でとりわけ重要視されるのが④だろう。日経記事にも、

『「資本増強や事業シナジーを生む業務提携について様々な選択肢を多面的に検討する」との文言も付された。ただ「提携先などについて具体的に決まっていることはない」(広報部)という。』

との記載。①~③ももちろん重要だがすぐに出来るか、効果が出るかというと定かではない(だったらとっくにやっているだろうし・・・)。

会社の生死という意味ではまずは資金流出を止血することが重要だろう。

 

大塚家具の第2四半期財務諸表にGC注記が記載された原因は営業損失やマイナスの営業キャッシュフローの継続とあるが、それを補う

資金調達の宛てが確保できていない

短期的な事業継続の可否と言う点では、これこそが問題だろう。

現在候補として挙げられている会社との提携がどう進捗するかは大塚家具にとって

バイタルだ。