重点経営指標の変化 営業利益⇒営業CF、当期純利益 【三越伊勢丹HDの例】
『三越伊勢丹ホールディングスは現行の中期経営計画を大きく見直す。連結営業利益で早期に500億円(2017年3月期は239億円)を達成するという目標を取り下げ、11月にも新たな中計を発表する。新中計では営業キャッシュフロー(CF、現金収支)や純利益を重視する意向だ。本業の百貨店が苦戦するなか、成長よりも構造改革に軸足を置く。』
『新中計では営業CFをベースにする。杉江社長は成長投資や株主還元、有利子負債の削減が並行してできる額を「年間で700億~800億円の黒字」とはじく。営業CFは大まかに純利益と減価償却費の合計で算出できることもあり、数値の整合性が取りやすいように営業CFと並んで純利益を利益目標にする。』
いわゆるキャッシュ・フロー経営だろうか。
三越伊勢丹HDは、従来の営業利益から営業CFに重点を移行するとのこと。
企業価値の最大化を目指す場合、意識すべきは営業利益でなく、将来の
フリー・キャッシュ・フロー(FCF)である。そして、FCFを大きくしようとすると、営業CFの増加が大前提となる。
そして、利益については、営業CFと整合の取りやすい当期純利益に注目する。名前から勘違いされやすいが、営業CFと整合の取りやすいP/Lの利益は営業利益ではなく、当期純利益だ。クラスでも強調しているが、
『当期純利益のキャッシュ版が営業CF』だ。
例えば営業CFは支払利息や法人税も控除済みであり、営業利益とは概念が異なる。
また、同社は自己資本利益率(ROE)6%を目標にしており、
であることも、当期純利益を重視する理由だろう。
さらに、
『純利益を重視する理由を「営業損益に反映されない減損損失も含めて店舗ごとの経営を考える」と話した。』
ごもっとも、である。
特に多店舗展開している会社においては、ある意味
店舗の改廃、出店と退店、はビジネスの一環だ。
つまり、退店によって発生する減損損失や退店に係る費用を無視した採算計算はナンセンスと言える。
今までどう考えていたのか疑問であるが・・・
過去にも同様の指摘をしたブログがあるので添付しておく。
今回の三越伊勢丹HDの中期経営計画、とりわけ重視する経営指標の見直しは理にかなったものだと思う。そもそも、どの指標をもって経営状態を測るかは業種や成長ステージによっても変わるべきだし、何でもかんでも営業利益、経常利益でもないだろう。
上場企業全体としては平成29年3月期に純利益が過去最高を更新したが、業績が低迷している企業は多い。三越伊勢丹HDにおいても再建策や経営体制について株主総会でも質問がありそうだ。今回の見直しが株主からどう評価されるか注目したい。