溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

会計ルールが営業スタイルを変える? 【不思議系記事】

www.nikkei.com

『「新ルールの導入で現場の営業スタイルが変わった」。国際会計基準IFRS)採用の花王の担当者は目を見張る。』

 

花王の担当者は新ルール導入の効果に目を見張ったらしが、

僕はこの記事に目を見張ってしまった・・・

 

ウソやろ~ 

 

なるほど、そう営業すればよかったのか!

会計ルールが変わって初めて気が付きました

 

これ、本当なんかな・・・

 

IFRSは2018年度から収益(売上高)計上に関する新ルールを強制適用した。同ルールを前倒しで適用した花王は17年12月期から、従来は売上高に含めるとともに費用に計上していた取引先へのリベートを売上高から控除する方法に変更。結果、前期の売上高と営業費用がともに400億円以上目減りした。

同社の営業社員はこれまでリベートを取引先に払うことが売り上げの増加に直接つながったが、新基準ではリベートをいくら積んでもその分は売り上げの増加にはつながらない。「本社でリベートと売上高のバランスがより見えやすくなった」(花王)という。』

 

現在の日本の会計基準では、リベートの取り扱い(会計処理)は明確に定められていない。業界や個社のこれまでの会計慣行にならった会計処理をしていることが多い。

対して、IFRSではリベートの性質により、値引きに相当するリベート(達成リベートなど多くは値引きに該当する)の場合は売上高から控除(値引き処理)し、得意先の販促費等を実質的に負担する場合は販促費(販管費として会計処理する。

 

もっとも上場会社や会社法の大会社など監査法人の会計監査が入っている会社においては、日本の会計ルールを適用していたとしても客観的そして会計の専門家の見地からリベートの性質に応じて値引き、あるいは販管費として適切に会計処理されているとは思う。とはいえ、

 

『従来からこう処理していますし、御法人の先生方にも認めてもらっていました!』

と言われると・・・な部分もあろうが

 

現状、多くの日本企業はリベートを販管費(販促費)処理している会社が多いのではないだろうか。

販管費として処理しようが、値引として処理しようが、営業利益に与える影響はない。しかし、売上総利益、そして売上高は減少する。

平成も終わろうとしている時代に売上高至上主義と言うものどうかと思うが、伝統的に日本の会社(というか経済社会)は売上高を重視する傾向が根強い。

 

しかし、これはあくまで財務会計のルール、つまり

外部報告用の会計処理について、

のことだ。

 

花王は売上高総利益率(粗利益率)が適用前の56%(16年12月期)から適用後に44%(17年12月期)になった。競合する米国基準を適用する米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は49%だ。「世界のライバルと同じ基準で財務指標を比べることで、会社にどんな改革が必要なのかがわかりやすくなった」(花王)という。』

 

あるいは、冒頭の

 

「新ルールの導入で現場の営業スタイルが変わった

 

これをどう受け止めればいいのだろうか・・・

 

以前はどのように他社と比較していたのだろうか?

何を経営上の重要指標(KPI)としていたのだろうか?


財務会計のルールは共通のルールではあるが、それが必ずしも個社の事業の評価に適しているとは限らない。財務会計のルール以前に、自分たちのビジネスの競争優位性はどこにあると考えいたのだろうか。会社の事業の評価、また進捗の管理に適した利益やKPIは会社が自ら考えて設定するべきものではないだろうか。


ウチでは以前から「管理上」はこうしていたけど、結果的に財務会計のルールと同じになった的な受け止め方かと思ったが・・・


ま、会計が少しは会社の役に立ったということで良しとするか(正しい方向に営業スタイルが変わったという前提で)(笑)

 

 

日本企業は本当に『見る目』が無いのか!? 

 

www.nikkei.com

本庶先生、ノーベル賞おめでとうございます!

いやー、めでたい。

月並みだけど、やはり日本人として誇らしく思える瞬間。

 

ということで、本庶先生のノーベル賞受賞を期しての投稿(笑)

 

『日本企業は「見る目」がない――。2018年のノーベル生理学・医学賞を受賞する京都大学本庶佑特別教授はこう不満を口にした。日本の大学などの研究論文がどこでビジネスの種である特許に結びついているかを調べると、米国の比率が4割を超す。研究開発力(総合2面きょうのことば)の低下が指摘されるなか、イノベーションにつながる国内の芽をどう見いだすのか、企業の「目利き力」が問われる。』

 

本庶先生は、日本の研究者は質の高い(将来大きな事業になる可能性も含めて)研究をしているのに、日本の(製薬)企業は日本の研究者に投資をせずに海外へ投資している。見る目が無い、と憤っておられる。

また、皮肉にも日本の研究成果を最も事業に生かしているのは米企業で、特に顕著なのが本庶先生の専門分野の基礎生命科学の分野。記事によれば、06~13年に最も多く日本の論文を引用したの米国の比率は46.8%、対するに日本は16.6%とのこと。

 


 

このような状況は基礎生命科学の分野以外でも同様に起こっているのだろう。そして、製薬企業だけの問題ではなく、他業種も、もっと言えば、国レベルでも同じ。

国全体の課題だ。

 

 では、日本の国、そして企業は本当に基礎研究や技術に対する目利きが利かないのだろうか?あるいは先見性が無いのだろうか?

 

個人の目利き力もあろうが、それ以上に

組織の意思決定プロセス

に問題があるように思える。

 

例えば企業の場合。基礎研究に対する投資案件が稟議などで審議されるとしよう。民主主義的な合議制によればよるほど仮に先見性があったとしても

見送られる可能性が高い

というのも、通常の意思決定プロセスにおいては、投資によるメリット(効果)がいつ、どの程度(金額的なインパクトや実現可能性)当社に期待できるのか、を示す資料や説明が必ず必要になる。

しかし、残念ながらというか当然ながら、新規性の高い案件であればあるほど、過去、現在をベースにした情報では説明は難しい。逆に言うと、だからこそ新規性が高い、画期的な発明に繋がる可能性があるわけだ。

 

よっしゃ、俺が責任とってやる、というオーナー企業以外、無理だろうな・・・

 

将来のことは誰も分からない。だからこそ将来の事象は全て可能性は0ではない。

組織の意思決定において将来の可能性をどの程度認めるか、ということだが、多くの日本の組織(企業)は相当高い成功確率を前提にしているのではないか。

つまり、日本企業の意思決定は

成功を前提とした意思決定プロセス

であるように思う。

 

今年のコーポレートガバナンス・コードの改正もそうだが、コーポレートガバナンスの強化の風潮の元ではそういった傾向がより一層強まる。

例えば、社外取締役の存在。社外取締役はその会社の事業に精通しているわけではない。むしろ組織の論理に待ったをかけ、客観的な立場、一般的な常識の観点から取締役会に意見を述べたり意思決定に参画することを期待されている。

事業に精通した人間であっても研究や技術の将来を見通すことは難しいだろう。将来確実に成果に結実する説明など期待できるわけもない。

いわんや社外取締役をや、だ。

となると、新規性の高い案件ほど社外取締役の合意は得られにくくなることは想像するに難くない。

 

 リスク(この場合は投資の成果の可能性)を適正に評価してと言う考え方もあるが、一定の前提を置いた評価なるになるので、実際、成功するのか、しないのかという疑問に対して直接的な解を得られるわけではない。

個人的には、一定の研究開発などの新規性の高い、近い将来の事業に結びつく可能性が高くない案件への投資は事業戦略との整合性や方向性といった面の評価に留め具体的な成果は問わない。その代わりに、投資金額を枠管理をすべきと思う。

 

 

要するに、一定の範囲内で

失敗を前提とした意思決定プロセス

を導入するという考え方だ。

 

湯水のようにR&D投資しても会社の財務基盤が立ち行かなくなるが、かといって案件ごとに一律に成功を前提とした意思決定プロセスに乗っけると目先の(場合によっては小さい)成果ばかりを追いかけることになりかねない。

例えば、投資案件を

 

時間軸:短期、中期、長期

難易度:易、中、難

 

のようなマトリックスによる区分ごとに意思決定のプロセスを変えてはどうかと思う。

 

最近では、ノーベル賞の受賞の度に受賞者が喜びと同時に将来の基礎研究への不安、そして重要性を説き支援を呼びかける姿が恒例になっている。

やはり、いつまでも日本が世界から賞賛されそして役に立つ姿を見ていたいものだしね。

 

上場か成長か、それが問題だ・・・


www.nikkei.com

『起業家のゴールといわれてきた新規株式公開(IPO)。だが上場を追わないスタートアップが日本でも広がってきた。煩わしい上場審査に気を取られている間に、成長のチャンスを失うのは嫌だ。こんな起業家の思いが起点だが、空前のカネ余りがもたらした異変でもある。マネーとスタートアップの新たな関係は、この先ずっと続くのだろうか。』

 

 

スタートアップ(ベンチャー企業)のゴールの1つはIPOと言われて久しいが、最近その流れに変化が見られるという。

 

『デロイトトーマツが8月末にまとめた起業家100人のアンケートで、将来の投資回収手段として「IPOをめざす」と回答したのは21%にとどまった。これに対し、72%がIPO他社からのM&Aの両方を検討しうる」と答えた。』

 

株式市場への上場を目指すよりも非公開のまま他社への事業売却(M&A)を希望するベンチャー企業が増えているとのことだ。

会社の目指すところはそれぞれだし、これまでもそういった会社が無かったわけではない。上場会社でも、最近再上場したワールドのようにMBOによって非上場化する例も少なくない。

しかし、IPOを目指さないベンチャー企業が増加傾向にある、というのはベンチャー企業を取り巻く事業環境に変化があったと考えられる。

マネジメント・バイアウト - Wikipedia

 

 

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非上場のままなら顧客開拓やサービス開発など、赤字を覚悟で積極的な先行投資ができる。「成長スピードが落ちればスタートアップではなくなる」。クラウド会計ソフトのフリー(同・品川)のCFO、東後澄人(37)はこう語る。』

 

理由の1つがこれだ。上場企業となれば四半期ごとに投資家から成果を追及されれる。まだまだこれから事業を大きく成長させないといけない会社からすれば、そんな環境ではとても中長期的な視野に立った事業投資はできない、ということだろう。

 

『貸し手優位が当たり前だった時代、スタートアップ経営者の悩みは「資金調達の難しさ」だった。銀行も大企業も小さな会社に冷たく、ベンチャーキャピタルも規模が小さすぎてなかなか当てにならなかったためだ。だが今は「(顧客を獲得し)売り上げを立てる方が資金調達より難しい」と打ち明ける経営者すらいる。』

 

また、上場の大きな目的である資金調達についても、昨今の空前のカネ余り現象

により、行き場を失ったカネがベンチャーへの投資に回るということだ。

 

こんな事業環境であれば、上場会社としての面倒なしがらみに縛られることなく資金調達ができるなら敢えてIPOを選択する必要はないという気持ちも分かる。

 

主義主張の異なる不特定多数と会話するよりも、意見を同じくする少数で会話したほうが話も通りやすいしスムーズだ。

 

分かるんだけどなぁ・・・

 

でも、それって、

周りをイエスマンで固める

ってことにならない?

 

株主、投資家は我々のビジネスを分かっていない

と嘆く経営者もいるが、ある意味それは当然のことだ。

経営者ほど会社のビジネスを理解している者がいるわけがない。周りが自分と同じ意見と思うことがそもそも錯誤だ。理解が不十分、あるいは意見が異なる立場に対してどう理解を得るかを前提に説明するスタンスが必要だ。

 

デビルズ・アドボケイトじゃないけど、自分の意見や考えが常に正しいとは限らないし、批判的な意見に揉まれる異なるよって自分の意見や考えが洗練されることもある。

 

もっとも、株主、投資家といっても一枚岩ではないし、それぞれの会社に対する期待も違う。全ての意見が理に適ったものとも限らない。

 

一方の株主、投資家にとっても

言ったもん勝ち的

な要求は慎むべきだし、またそれを抑制するためにも

ある程度のビジネスや数字に対する理解は必要だと思う。

一部の行き過ぎた要求に対しては株主、投資家間で自浄作用、しら~っと、

 

こいつ、何言ってんだ?

 

的な冷ややかな対応とか、が働くことを期待したい。

じゃないと、さすがに会社に同情する・・・

 

株主、投資家にとっても、別の意味で

鶏と卵の関係

だ。大きく成長してたくさん卵を産んでもらった方が良いだろう。

 

上場か成長か

 

本来、両者は対立するものではない。

あくまで運用の問題だと思う。

 

会社、株主、投資家、三者三様ではあるが、利害が全く一致しないということはないだ。共有できる部分は必ずある、基本的には同じ方向を向いているはずだ。

自身の思いや要求を持つことは良いが、相手の意見を尊重しつつ議論をすることによって、3者にとって望ましい会社の将来を共に作っていく姿勢を意識することで解消することはできないものだろうか。

 

こんなこと、小学校で当たり前に習うことなのにね・・・

のれんの償却論議 日本基準に軍配か!? 【ボヤキ系記事】

 


www.nikkei.com

国際会計基準IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)が、企業買収を巡る会計処理の見直しに着手したことが明らかになった。買収代金のうち相手企業の純資産を超えて支払った「のれん」と呼ぶ部分について、費用計上義務付けの議論を始め、2021年にも結論を出す。』

 

大型のM&A(合併・買収)が相次ぎ、企業財務への影響が強まっていることを背景に、IFRSのれん償却の議論が進んでいるとの報道だ。

 

のれんについては、過去何度も当ブログでも取り上げているが、のれんの償却については、

日本基準(償却)対 IFRS、米国(非償却)

と会計ルールの相違がある。

どっちが有利不利と言うことではなくて、考え方の問題なのだけど、一般的には(そして残念なことに一部の専門家でも)メリデメの発想で語られることが多い。

 

現在、IFRSで進行するのれんの償却の是非論も、どうやらそういった事情がありそうだ。

 


日本では最長20年で償却し、費用として処理するが、IFRSではのれんの償却は不要な一方、買収先企業の財務が悪化した際などにのれんの価値を一気に引き下げる

減損損失の計上が必要になる。

 

こんな指摘があるという。

 

巨額の減損損失を突然公表するケースもあり、

投資家から分かりにくさを指摘されてきた。』

 

何を今さら・・・

 

IFRS以前、欧州各国ものれんは償却していた

ところが、企業買収(M&A)が多くなり、のれんが多額に上ると

毎期の償却負担に耐えられないということで非償却にした経緯がある。

 

で、今度はのれんが積み上がると、減損により『欧州中心に広がるIFRS採用企業には業績の下押し要因となる。』

か・・・

 

ご都合主義 だなあ・・・

 

事情知らない人にとっては真面目な議論に映るのだろうか・・・


IASBのフーガーホースト議長はインタビューで、現在のIFRSののれんの会計処理に関する問題点として、


減損損失を巡る企業の判断が「楽観的になりやすい」うえ、計上のタイミングも「遅すぎる」』と指摘したとのこと。

 

そんなのは、会計ルールの問題点ではなくて運用の問題だ。

B/Sを重視すればP/Lが悪化するし、P/Lを中心に考えればB/Sへ皺寄せが起こる。

どんなルールだって万能ではないし、テーマに対するメリットをベースに設定して、想起されるデメリットは運用でケアするものだろう。

 

しかし、この問題は欧州に限った話ではない。
日本でも既に武田薬品工業三菱重工業ソフトバンクグループなど大企業を中心に100社超が導入している。 時価総額では、今や1/4がIFRS適用会社だ。

 

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『17年度時点で国内IFRS導入企業(約160社)は約14兆円、欧州の主要600社は240兆円ののれんを抱える。仮に20年間の定期償却が導入されると、日欧合計で年間13兆円の減益要因が生じる計算になる。』


中国では主要100社で約10兆円、大型M&Aが活発な米国ではのれんは主要500社で340兆円にのぼる、とのことだ。

IFRSの対応によっては中国や米国企業への影響もあるだろう。

 

そんな環境で、こんな話持ちだしたら

却って混乱を招くだろうに・・・

 

と思っていたら、早速、日本の株式市場ではこんな影響が出ているようだ。

 

株価が全面高の中でソフトバンク株が安く推移

 

www.nikkei.com

 

IFRS採用のソフトバンクが抱えるのれんは4.3兆円と日本企業で最大。仮に20年で定額償却することになれば、ソフトバンクの営業利益を

毎年2000億円強押し下げる。』

 

最近はやりのP/L脳ではないが、P/Lだけを見れば確かにマイナスの影響はある。

 

しかし、記事にもあるが、株価(理論株価)は将来の会社の稼ぎ(フリーキャッシュフロー)をベースに算定される。

のれんの代金は企業買収(M&A)時に既に支払済みだ。つまり、のれんを償却しようが、減損しようが、

将来の稼ぎには一切影響は無い

(なお、税務上ののれん(資産/負債調整勘定)は会計処理によらず5年償却となるので、会計上ののれんを償却しようが減損しようが税額に与える差異もない。)

 

のれんの償却という会計処理の点に限れば、ソフトバンクの株価(企業価値)にはニュートラル、影響はない。にもかかわらず、実際に株価が下がるのはなぜか?

誤解した人たち(あるいはそれを見越した人たち)がソフトバンク株を売却するからだ。記事はこの点を指摘しているのだが、ということは、逆に思わぬ安値でソフトバンク株を取得することができるということでもある・・・

 

何時の時代も、無知な者がカモられる。

 

良い悪いは別として、

時代は変わる、ビジネスも変わる、ルールも変わる

目的は何か、どこに影響が出るか、変わらないのは何か、

どう対応すべきか

常に考えるようにしたい。

 

 

 

 

 

 

だったら、AIに会計監査を代わってもらえば?

 

www.nikkei.com

『大手監査法人人工知能(AI)を活用した会計監査が広がっている。監査法人トーマツは財務情報などを自動分析するAIシステムの分析件数を2割増やす。EY新日本監査法人も会計の異常値を検出するシステムを導入した。大企業の会計不祥事が相次ぎ、監査の信頼性向上が課題となるなか、AIの導入で不正を発見しやすくする。業務効率化で会計士不足に対応する狙いもある。』

 

AIの進化によって駆逐される仕事の代表に会計士(会計監査)が挙げられる。

賛否はあろうが、AIがやった方が速く正確でコストも安いのならば、一刻も早くAIに進化してもらいたいと個人的には思う。

担い手が不足(なり手が減少)する不人気な仕事を無理に続ける必要はない

(それも一般に難関と言われる試験をクリアしてまで)。

 

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確かに、会社の取引規模が大きくなると会計監査でサンプリングする取引数も膨大になる。数を熟してナンボの仕事は自動化した方が効率的だし、記事が言うように、

『2017年度は1300件強だった分析数を、今年度は2割増やす。データを専門的に扱うデータサイエンティストも増員する。「会計士が専門的な業務に集中できるようになる」』

というのも表面的には理解できる。

 

しかし敢えて問いたいのは、

 

会計士が集中すべき専門的な業務って何?

 

定型業務は自動化して、人間(会計士)ならではの専門的な業務へ集中、

耳障りは良いが、一体どんな業務を言っているのだろうか?

 

AIが検出した怪しそうな取引を関連証票から検証して、不正を暴く、ことを意味しているのだろうか?

会計監査は、不正を暴くというより批判的機能(会計処理の間違いを指摘)と指導的機能(間違いを正すように会社を指導)だが、それを意味しているのだろうか。

 

だとすると、

 

無理だね(たぶん)

 

もちろん、AIが膨大な取引の中から会計処理の間違いや不正、いわゆる不適切会計処理を検知するかもしれない。その可能性は大いにある。

 

しかし、会計監査で問題になる、つまり不適正意見の原因となるような間違いや不適切会計処理は質もさることながら量、金額的な重要性も考慮される。

ちりも積もれば山となるように、細かい間違い等を積み上げた結果それなりの金額になることはあろうが、昨今、不適切会計処理で問題となった会社の例を見れば明らかなように問題はそういうレベルではない。

人力では発見できないような細かい不適切会計処理の話をしているのでなく、もっとデカい話でしょう、問題は。

仮に手口が巧妙であるなど発生直後はタイムリーに(発見)指摘できなかったとしても、意図した不適切会計処理は継続的に行われる

しかも、その金額は累積的に大きくなる。


つまり、そんな大きな問題ならAIでなくても気づくだろうし、AIの助けを借りないと集中できない業務ではない。

 

問題は、不適切会計処理を発見しても、会社に指摘できなかったり、指摘しても修正等させるように指導できなかったりする環境ではないだろうか。

 

巷では、監査対象の会社から直接監査報酬を得ているから適切な指摘ができない等、そもそもの会計監査制度の欠陥を指摘される。

それも確かに一因だろうが、それだけでもない。

会社から監査報酬を得ているといっても、会社を窓口として得ているのであって経営者から得ているわけではないから『会社』に遠慮する必要はないのだけど・・・

 

ぶっちゃけ、会社も、そして当の会計士自身も

会計監査を重視していない

ことが根幹のように思う(この点は深いのでまた次の機会にでも)。

 

取引発生の事前に会社に相談されない時点で

会計監査は失敗

だと思う。

会社が質的にも金額的にも大きな取引を為そうとする場合、当然その後会計処理の話になり決算数値へ影響するのだから、会社の想定通りで問題ないか監査法人へ照会するだろう、普通。そうしないということは、会社は少なくともそうするだけの重要性を感じていないということだろう。

であれば、そんな相手から間違いだと指摘されたとしても反応は言わずもがなだ。

 

会社(経営者)と監査法人の関係を改善しないことには、

会計士が専門的な業務に集中しても根本的な解決にはならないと思う

 

例えば、

AIが指摘したら事態は変わるのだろうか?

 

だったら、一部と言わずに会計監査の全部をAIに代わってもらいたいものだ。

 

ちなみに・・・

以前は(と言ってもそんなに昔でない)は、会社(経営者)と監査法人が『良い』関係を築いていた例が多くあったと思う。経営者と堂々とやり合っている先輩会計士を見て憧れたものだ。経営者にとって担当の会計士(パートナー)は耳の痛いことを言われる存在ではあるが、それでも会社や自身にとって必要な存在だという認識が感じられた。経営者と会計士が互いにリスペクトする環境だったから、我々は会社(クライアント)の方々からも多くを学ばせてもらい、会計の専門家としてだけでなく社会人として成長することができたと思う。そうした環境で得た知見をクライアントたる会社に提供し、お互いが学び高めあう関係、そんなに難しいことだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

大塚家具のGC注記の本当の理由とは!?


www.nikkei.com

8/14に大塚家具が開示した2018年1~6月期の決算短信「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン)」が記載された。ゴーイングコンサーンGC)注記については、こちら☟に記載しているので参考にしてほしい。

globis.jp

備忘録として事務所ブログにも記載しておく。

 

簡単に言えば、近い将来会社が倒産する可能性が高いと考えられる場合にGC注記は記載される。投資家などステークホルダーにとっても極めて重要な注意喚起となるため、財務諸表の直後(注記の筆頭)に記載される。

 

近い将来の倒産リスクといっても、その大小が経営者の主観によってブレてはいけない。そこで、開示ルールでは近い将来の倒産を示唆する以下の具体的な状況を例示列挙して、これらの状況に該当する場合にはGC注記の要否を検討して判断することになる。

 

GC注記が必要となる会社の状況例】

・売上高の著しい減少
・継続的な営業損失又は営業キャッシュ・フローのマイナスの発生
・借入金等の返済の困難性
・新たな資金調達の困難性
・主要な仕入先からの与信又は取引継続の拒絶
・重要な市場又は得意先の喪失
・事業活動に不可欠な人材の流出
・ブランド・イメージの著しい悪化 等

 

財務諸表の注記は本来、財務諸表の作成責任者である会社の経営者が判断することになる。しかし、普通の神経ならGC注記は避けたいところだろう。自らウチの会社は近い将来倒産するかもしれませんよ~、と公言することになる。

対象になる会社は主として上場会社であり、監査法人の会計監査が必要になるため、実務的には監査法人が開示ルールにしたがってGC注記の必要性を経営者へ指摘、経営者と検討協議して判断に至ることになる。

 

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大塚家具のGC注記は、

営業損失やマイナスの営業キャッシュフローの継続

を主たる原因している。

 『継続的な』営業損失又は営業キャッシュ・フローのマイナスとは最短で言えば2期連続となるが、実務上は2期連続で赤字が確定してもその時点では来期計画が策定されており、

3期目が黒字計画であれば3期目の計画達成を見てのGC注記判断

となることが多い。

 

大塚家具は、

2017年12月期の決算発表時点での

2018年通期計画では

 

売上高    45,663億

営業利益   200億

当期純利益    1,390億

 

と黒字計画を公表していた。ちなみに、第2四半期までは、営業&経常赤字の計画。

ところが、当第2四半期の決算発表時点で、通期計画を以下に修正した。

 

売上高          37,634億

営業損失        5,100億

当期純損失    3,426億

 

つまり、第2四半期の業績発表時点(通期の8.5か月経過)で、

3期連続営業赤字(そしておそらく営業キャッシュ・フローも赤字だろう)が見えたため、このタイミングでのGC注記となったと思われる。

 

しかし、それ以上に要注意なのが現金(現金及び現金同等物)の状況だ。

 

会計監査の賞味期限は1年だ。

GC注記に関して言えば、仮にGC注記を記載しない財務諸表に適正意見を付した場合、その会社が1年以内に倒産すれば監査意見の適正性が問題となる。つまり、GC注記が記載されたということは今後1年以内の倒産可能性が高いという状況を意味する。近い将来の倒産というのは具体的には今後1年以内ということだ。

継続的な営業赤字や営業キャッシュ・フロー赤字ももちろん問題だが、実はそんな会社は結構存在する。2,3年の赤字では会社は倒産しないケースは多い。

 

会社の生死を分けるのはおカネだ。

出血しても輸血があれば当面生き延びる

ことができる。

 

大塚家具の最近の現金残高と営業キャッシュ・フローの状況をチェックすると以下。

 

【現金及び現金同等物期末残高推移】

         (単位:百万円)

2015年12月期   10,971

2016年12月期     3,853

2017年12月期     1,806

2018年  6月期     2,205

 

2.5年の間にざっと80億円以上のおカネが減少した。

特に、2015年から2016年にかけての現金残高の減少が目を引くが、例のお家騒動の影響で60億近い営業キャッシュ・フロー赤字に加えて配当金支払などで一気に70億の減少となった。2018年の第2四半期は保有資産の売却などで何とか少し残高を回復させているが、当第2四半期の22億という水準は、2018年の通期予想売上高で

手元流動性は約21日と1か月を切る水準だ。

 

【営業キャッシュ・フローの推移】

                                 (単位:百万円)

2015年12月期   269

2016年12月期 △5,770

2017年12月期 △4,785

2018年6月期   △2,080

 

直近2年度は、毎年50~60億の現金が事業により流出している。この調子で営業キャッシュ・フローの赤字が継続すると、いずれ手持ち資産の売却も底をつくだろうし、資本提携先など大口のスポンサーの登場無しでは

手持ちの現金がすぐに底をつく

ことは想像するに難くないだろう。

 

GC注記には、会社の状況改善策も併せて記載されている。

大塚家具では、対応策として
①店舗規模の適正化によるコスト圧縮
②人員再配置によるコスト圧縮
③売上改善策
④安定的な財務基盤の確立

その中でとりわけ重要視されるのが④だろう。日経記事にも、

『「資本増強や事業シナジーを生む業務提携について様々な選択肢を多面的に検討する」との文言も付された。ただ「提携先などについて具体的に決まっていることはない」(広報部)という。』

との記載。①~③ももちろん重要だがすぐに出来るか、効果が出るかというと定かではない(だったらとっくにやっているだろうし・・・)。

会社の生死という意味ではまずは資金流出を止血することが重要だろう。

 

大塚家具の第2四半期財務諸表にGC注記が記載された原因は営業損失やマイナスの営業キャッシュフローの継続とあるが、それを補う

資金調達の宛てが確保できていない

短期的な事業継続の可否と言う点では、これこそが問題だろう。

現在候補として挙げられている会社との提携がどう進捗するかは大塚家具にとって

バイタルだ。 

四半期情報開示は不要なのか?

 

r.nikkei.com


少し前になるが、日経に
四半期開示は不要か?
と言う記事があった。

四半期情報の開示(四半期報告制度)は、2008年4月1日開始事業年度から義務化された。対象は上場会社等。つまり、上場会社はマスト。非上場会社でも有価証券報告書を提出している会社(継続開示会社)は半期報告書の代わりに四半期報告書を提出することもできるというもの。

四半期報告制度導入以前は、上場会社等は半期報告書を開示していた。想像に難くないが、

イムリディスクロージャー(適時開示)が変更の趣旨だ。要求したのは、投資家。

投資家の投資行動の変化、投資期間(投資してから収益を認識するまで期間)が短期化したことが理由とされる。
四半期情報はアメリカで既に導入されており、日本の株式市場に外国人投資家の存在感が増したため、彼らの要求を日本市場も受け入れた、ということだ。

さて、四半期報告制度、そもそも導入時に
本当に要るのかな?
と疑問だったのを覚えている。

従前から半期決算情報を含む半期報告書制度があるわけだし、四半期といっても
短縮期間は90日(3か月)。


その90日が勝負を決めるんだ!!と言われれば、そうなんかなぁと言わざるを得ないが、当時の僕には90日を短縮する積極的な理由はイメージできなかった。

また、半期の業績報告の間、会社から何も情報開示が無いかと言うと、そうではない。上場会社は、一定の要件を満たす重要イベント(社長の交代や業績の上方下方修正など会社にとって重要なイベント)は東証の適時開示ルールにしたがって、イベント発生後速やかにその旨や影響等をディスクローズする必要がある。

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半期ごとにまとまった業績報告をしてその間の重要イベントは発生ベースで対応
これで十分ではないか、という疑問を導入当初に感じた。


コストの問題もある。追加コスト無しであればまだしも、会社からすれば決算報告が年2回だったのが、年4回に倍増する。事務コストの増加は必至だ。また、監査法人のレビュー業務も必要だ。半期報告書に含まれる半期決算書までは監査証明が必要だったが、四半期決算書に対してはスピ―ド重視でレビュー報告書と言う監査よりも若干手続きを省いた手続きとなる。とはいえ、最低限必要な作業はあるので、やはり回数が増えれば監査コストは増える(実際、これを理由に年間の監査報酬を増額してもらってたし)。

四半期報告書に含まれる情報は、会社からのコスト負担の要請を受けて導入当初から3年後に簡素化された。具体的には、一定の注記を条件に、第1四半期と第3四半期の(連結)キャッシュ・フロー計算書の作成等の省略が可能になった。

そんな四半期報告制度だが、ここに来て疑問視する声が上がっているらしい。

記事には、
短期で成果を出すよう経営者や投資家に心理的な圧力
を掛けるというものだ。』

この点は、アメリカの著名な投資家であるバフェット氏も指摘してる☟ 


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少し引用。
『企業が四半期決算に縛られると、数字合わせという操作に走り、企業の長期的重要関心事に反する愚かなことをするものだ。この操作は一旦始めるとやめられなくなる傾向がある。最高経営責任者(CEO)がxxドルなどと四半期利益予測を出し、その企業の業績が改善された例など見たこともない。結果的に、企業は誤った情報を発信していることになる。私はマネジャーたちに、50年続く同族企業に居るつもりでやれば、正しい決定ができるものだと説いている。私は20ほどの企業の顧問をしているが、目標達成が困難になると数字を操作するという悪癖に陥りがちだ。しかも一度始めたらやめられなくなる。IR部門が風評被害を恐れ口を挟み、愚かなことをしがちなのだ』

短期間の業績開示が、経営者に対する短期成果主義へのプレッシャーとなり、長期的な視点に立った経営がおろそかになる、それどころか粉飾決算を助長する、というものだ。
バフェット氏に限らずこういった批判は少なくない。
(バフェット氏に限っては、情報開示のあるべき論というよりは自社の都合と言う面もあるようだが・・・)

日経記事では、『英国では07年に導入された四半期開示の義務が14年に撤廃された』
とのこと。

しかしながら、同時に、次のようにも言っている。

『最近発表された学術論文は、わずか7年で制度が大きく変化した英国を取り上げた。開示義務の導入と撤廃が企業や市場に与えた影響について、その論文は分析。上場企業の設備投資や研究開発費を見る限り、義務化で経営が短期志向になるとか、撤廃で長期志向になったとの変化は見いだせないと結論づけた。』

会社視点、投資家視点では意見の相違もあろう。会社側の視点に立ってきた感想としては、IRへの度重なるコスト増加や投資家からの短期での成果要求などはかえって

会社を弱体化させるのではという思いも理解できる。しかし、
投資家あっての会社だし、会社あっての投資家、
どちらかの主張では無くお互いの合意、あるいは
合意に至るコミュニケーション
こそが重要ではないかと思う。

コストを費やして四半期情報を作成しても投資家に有用な情報とはなり得ない、というのは、会社が決める話ではなく、投資家が決めることだ。投資家にとって有用な投資情報であるならば会社はそれに応える責任がある。もちろん、一部の投資家の要求が偏っているとか不合理な場合もあるだろう。その場合は、行き過ぎた情報開示のコストは会社のフリーキャッシュフローを引き下げ、企業価値を低下させるため、投資家へブーメランで返ってくることになる。

 

また、投資家が短期志向になっているからと言って、会社の経営視点が短期化する必要もない。それを言い訳にするのは筋違いだ。会社と投資家の見解に違いがあれば、ギャップを解消すべくコミュニケーションを取るなりの努力をすれば良いだけのことだ。イギリスの例でも紹介されているが、四半期情報の開示が無くなったからと言って会社の事業戦略が長期化した訳でもないらしい。自分たちができないことを他責にするのはどうかと思う。

当時は成り行きとして導入された四半期情報開示だが、改めてその是非を検討することは、企業と投資家がお互いの存在意義やそれを踏まえて資本市場の一層の成熟には必要なプロセスではないかと思う。

 

と、こんな情報が・・・

 

 

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 この方もバイアスがかかってそうな気もするが、近々動きがあるかも・・・