溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

会計の数字は本当に客観的なものか? 【ソフトバンクの例】

www.nikkei.com

「日本、いや世界で最も複雑な財務諸表かもしれない」。トーマツ幹部がこう形容する担当企業がある。それは大型M&A(合併・買収)を繰り返し、姿が大きく変わり続けるソフトバンクグループだ。担当会計士は当然、エース級を送り込んでいる。』

 

何が「最も複雑なのか分かりにくいんじゃないだろうか?

記事は続く。

担当会計士を悩ませる原因の一つはソフトバンク資産評価だ。』

 

資産評価が(日本の会社の中で)最も複雑で、会計士を悩ませる、という。

ソフトバンクの場合は、巨額買収によりバランスシート(B/S)の総額の内、

 

のれんが約16%を占める。

金額では4兆3,900億円にも上る

 

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のれんについては、当ブログでもいくつか記事を書いているが、買収金額と買収先の会社の純資産の差額であり、買収金額>純資産の場合、ソフトバンクのように資産側にのれんが発生する。簡単に言えば、

買収金額が高くなればなるほどのれんは大きくなる。

 

のれんは、目に見えない資産(無形固定資産)だ。目に見える資産でも時価の査定はそれなりに難しいが、無形資産となればなおさらだ。

仮にのれんが”価値無し”となると、

のれんの減損損

が必要になる。

減損損失当期純利益を悪化させるだけでなく、

その分の純資産も吹っ飛ぶ

ことになる。

ザックリ言うと、ソフトバンクの場合、

純資産の16%が吹っ飛ぶことになる。

(正確には税効果分が考慮されるので、吹っ飛び分はもっと小さくなるが・・・)

ちなみに、平成30年3月期の第2四半期(平成29年9月末)時点では純資産比率は19.5%なので、インパクトの大きさがイメージできるだろう。

 

では、のれんの評価はどうするのか?

 

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記事にもあるように、のれん発生後、年に一度、あるいは事業の収益環境などが悪化した際に減損の要否をチェックすることになる。

 

そして、事業の収益環境などの悪化とは、要するに足元の業績だけでなく、

将来の事業見通しをどう評価するか

に掛かってくる。

 

 「(あらゆるモノがネットにつながる)IoTが普及すれば、このくらいの売上高と利益は出る」。孫正義会長兼社長は本社の会議室で

アームの成長性について熱弁を振るった。

面談相手は投資家ではなく、トーマツの担当会計士だ。』

 

記事のこの部分が、この状況を物語っている。

仮に足元の業績が悪くても、

『このビジネスは、将来、”カクカクシカジカ”で成長するのです』

と会計監査を担当する会計士を納得させられるかどうか、

のれんを減損するかどうか、の分かれ目となる。

(カクカクシカジカの部分が重要なのだけれど)

 

これは、のれんに限ったことではない。現在の会計ルールのトレンドからは、B/Sの多くの資産、負債を時価評価することになる。その際の、中古市場などの実際の直近の売買の実績価格が把握できる場合はその金額を時価とみなすが、そういった市場がない場合は、のれんと同様の方法、つまり将来その資産からどれだけのキャッシュを見込めるか(その現在価値)、から時価を把握する。

会社が保有する資産の内の多くは後者で時価を把握することになるが、これは、

時価は経営者の将来見通し次第ということを意味する。

 

(会計の)数字は客観的なものと思われるかもしれないが、

意外にそうでもないことが分かるだろうか。

 

現在の資産評価は依然、取得原価主義だ。

つまり、B/Sの資産、負債の金額は、当初その資産、負債を

ゲットした際に支払った/受け取ったおカネの金額

で据え置かれている。

この良し悪しは置いておいて、少なくとも過去の一定時点の実績としての金額で評価されている。その意味では、金額にそれなりの客観性を見出すこともできるだろう。

 

しかし、今後益々、資産、負債を時価評価する流れは進むと考えられる。

つまり、

”経営者の将来見通しが会社の数字を決める

ことになる。

極端になるが、同じ事業、同じ業績の会社であっても、楽観的な経営者の会社であれば楽観的な数字、悲観的な経営者であれば悲観的な数字となることもあるので、会社の数字を活用して会社との関わり方を判断するステークホルダーとしては、数字だけでなく、

数字の前提となる経営者の事業見通しやその妥当性を理解する必要性が今後益々重要になるだろう。

 

会計士が会計監査でチェックしてくれるんじゃないの?

確かに、会計士は会社の数字を会計監査する。

 

君和田氏は「会計士は過去のことを見るのは得意だが、

将来の見積もりは不得意」と指摘する。』

 

会計士は、会計、監査には詳しいが、

経営や会社が営む事業のプロではない

少なくとも、そのようなスキルは試験制度にも無いし、教育研修にもそれほど時間を割かれていないだろう。

ぶっちゃけ、

経営者が提示する将来の見積もりが明らかに合理性を欠いたり、蓋然性に乏しかったりしない限り

 

”ノー”は言えないだろう。

 

ということで、一般のビジネスパーソン

アカウンティングリテラシーの重要性

が今後益々問われることになる、というお話でした。

決算早期化は投資家のためだけなのか!? 【あみやき亭の例】

www.nikkei.com

あみやき亭の決算早期化に関する記事だ。
ビジネススクールのアカウンティングクラスで、決算には何日必要か?

という質問をするが、最も早い会社が1日と言うと(解答)結構驚かれる。もっとも、決算業務に何が必要なのかを理解している人も少ないので、何日かかるかと言われてもピンと来ない人も多いが・・・


とはいえ、外部に公表する決算数値となれば、ザックリこれくらいといった粗いモノだとマズいのは想像に難くないだろう。決算発表に監査法人の証明書(監査意見)は不要とは言っても、公表後の決算数値の修正は宜しくない。監査法人の実質的なOKが得られるレベルの決算数値の確定となると、それなりの決算作業が必要になるのは分かるだろう。

3月決算上場会社の決算発表の集中日が5月中旬(所要日数約45日)であることからも、あみやき亭の決算日の翌日発表(所要日数1日)は相当早いスピードであることは理解できるだろう。記事によれば、決算日の翌日に決算発表する会社は今やあみやき亭だけ、のようだ。

 

「同社の佐藤啓介会長は「やるからには1番にこだわりたい」と意気込む。」


確かに、決算を早期に公表することは投資家に対してもアピールにはなるが、当然それに伴うコストは発生するのではないか。

そこまでして決算発表を急ぐ必要はあるのか?

と思う人もいるかもしれない。

実はそこまで急ぐ理由は外向け(外部公表)だけではない。

内部的なメリットもしっかりあるのだ。

 

「日時決算のデータは会計士のもとに毎日送られる。会計士は不自然な点が見つかればその都度、会社側に確認する。あみやき亭の経理部門と担当会計士は情報を共有し、売り上げが落ち込むなど店舗に減損処理の兆候が見られれば即座に対応する。」

 

一見、監査作業の増加⇒監査報酬増加となりそうだが、どうだろうか。作業工数自体はそれほど変わらずに、作業のタイミングを分散しているにすぎないかも知れない。

「会計士側も決算集中日を避けて業務を分散できる利点がある。」

 

日本の会社は3月決算、12月決算が多いので、どうしても期末決算監査期間(決算日後~約1.5か月程度)に監査作業が集中する。ピークに合わせて人員を採用すると、それ以外の期間は稼働率が落ちる(人が余る)ため、作業を分散化することは実は監査法人にとってもリソースの平準化となる。


また、固定資産の減損のような監査イシューをタイムリーに把握することも、結果として監査業務の品質や効につながる。どういうことかというと、決算数値のほぼ固まった状況の中、例えば期末決算監査で減損処理の必要な店舗が検出された場合、会計ルールでは減損処理すべきであったとしても会社としては社内的にも着地の数字は固まっており修正したくないと考える。そうなると、減損処理をしないですむような理屈(往々にして屁理屈が多い)を作り、その妥当性を監査法人が検討することになる。問題(金額)が大きくなるほどに、監査チームだけでは抱えきれなくなり(監査法人の)本部を巻き込む。そもそも屁理屈(であることが多い)から、本部⇔監査チーム⇔会社とのやり取りが何往復にも登る・・・という具合に、膨大な監査作業工数が発生することなる。また、あってはいけないことだが、屁理屈が通ってしまうこともあるかもしれない・・・
監査イシューを前兆段階で、会社と会計士が把握して互いに検討、協議することによって、より合理的な解決策を見出すことができる可能性が広がる。

 

また、以下の点も見逃せない。

「「カギは単純化と平準化だ」と佐藤会長は強調する。あみやき亭では交通費などの即日精算は当たり前。経費は原則、当日に現金で払い戻しを受ける。経費を勘定システムに入力するのはパート社員で、経理部門の正社員は2人のみだ。」

 

純化することで、オペレーションのミスが減るし、パート社員による対応が可能となる。平準化により、転属、コンバートによる一時的な効率ダウンも回避できる。つまり、単純化、平準化の制度構築(マニュアル整備など)のコストがかかるが、

オペレーションコストの低減が期待できる。また、本業に集中しており、本業以外の営業外活動など非定型業務が少ないことも要因だろう。

 

「あみやき亭の17年3月期の売上高に占める販管費の割合は53%と同業の安楽亭などに比べ10ポイントほど低い監査法人と協業した高速決算が業務の効率化を促している。」

 

また、業務が複雑、ユニークで属人化すると、その人以外が業務内容を理解しておらず、第三者が不正に気付きにくくなる。

純化、標準化は不正リスクを低減する効果も期待できる。

 

記事の表題は監査法人の人手不足が迫る効率化だが、企業側からの視点として、会計監査を“敵”や“厄介な存在”としてではなく、外部リソースとして上手く活用して

ディスクロージャーの向上やオペレーショコストの削減に繋げた事例ではないかと思う。

 

子会社在庫の未実現利益って何? 【ヤマハの例】

 

www.nikkei.com

 

 『ヤマハの2018年3月期は、対ユーロでの円安進行の一服が利益を押し上げそうだ。円安一服により海外子会社の在庫で連結ベースの利益になっていない「未実現利益」が縮小し、増益要因となる。円安に伴う輸出採算の改善も含め、今期の営業利益を前期比30億円程度押し上げる。』

円安進行によりヤマハが増益になるとの報道。

輸出型企業にとって円安が追い風であることは多くのビジネスパーソンが理解していると思う。

為替が企業経営に与える影響はこちら☟

 

tesmmi.hatenablog.com

  

しかし、今回は『円安の一服』が利益に好影響ということで、

俄かには理解できないのではないだろうか?

ということで、今回はこの仕組みを説明してみたい。

 

【子会社在庫の未実現利益って何?】

まずは、子会社在庫の未実現利益から説明する。

 

例えば、以下の取引を考えて見る。

親会社:自動車メーカー

子会社:自動車販売会社

商流:親会社⇒子会社⇒外部の顧客

 

【取引】

親会社:製品100を子会社へ120で販売

子会社:親会社から仕入れた製品120を150で外部へ販売

 以上の取引で、決算期末日において販売子会社に親会社から仕入れた製品120が在庫で残っていたとする。

 

親会社では、子会社に製品を販売した時点で20(120-100)の利益を計上している。

親会社の単体決算ではこれでいいのだが、問題は連結財務諸表を作成する場合だ。

連結、すなわちグループ全体としてみると、製品在庫が親会社から販売子会社へ移動しただけでグループ外部には販売されていない。つまり、連結決算上は、

親会社の製品売上はノーカウントとなる。

しかし、連結決算手続きの過程で一旦、親会社、子会社等の連結会社のB/S、P/L等を合計(合算)しているため、利益の20を取り消す必要がある。

お察しのとおり、子会社の製品在庫に含まれる20が連結決算上の『未実現利益』となる。

  

子会社の決算書の製品在庫金額は子会社の仕入価格は120だが、連結グループとしてみた場合は、あくまで親会社での製造原価の100となるため未実現利益(内部利益)相当分20部分を取り消す必要がある(*)。また、子会社では、この120を期末在庫として売上原価を計算しているが、連結グループとしてみた場合はその分売上原価が小さく(=利益が大きく)なっている。したがって、以下の会計処理でこれらの影響を取り消す。

 

【会計処理】

(借)売上原価(子会社) 20 /(貸)たな卸資産(子会社) 20

    ↑子会社の売上原価過小分を増加  ↑未実現利益の消去

 

さらに税効果の調整も必要になるが、ややこしくなるのでここでは割愛する。

 

なお、それに先立って売上も取り消す必要があるのではと思った人は勘がいい。その通り、親会社の販売子会社に対する売上と子会社の親会社からの仕入れも取り消す。

 【会計処理】

(借)売上原価(子会社) 120 /(貸)売上(親会社) 120

 

以上、会計処理を説明したものの、まあ細かい会計処理はともかく、一旦、個別の会社で計上された利益が連結グループとしてみた場合には内部取引の利益と考えられる場合、連結決算上は取り消す必要がある。

これを『未実現利益』と言う点だけでも理解してもらえば結構と思う。

 

円高が進むと何故利益が減るのか?】

ヤマハはピアノなどの楽器を中心に国内やアジアで製造し、本社経由で海外の販売子会社に出荷している。中略 海外在庫を円建てに換算する際、円安が進むと連結ベースの消去額が増える。』

上の設例で分かるように、一旦、個別決算で計上した利益を連結決算で取り消すだけなので本来、損も得もない

それが、円安が進むと連結ベースの消去額が増えると言う。

 

これは、為替換算の手続きの影響だ。

 

以下の設例を見てほしい。

 

親会社:海外子会社へ製品(原価100円)を販売1.2ドル(@100円/㌦)で販売

海外子会社:決算日に親会社から仕入れた製品を在庫として保有

決算日の為替レートは@120円に円安が進行したとする。

 

ここで、親会社で計上された利益は20円(1.2㌦*100円-100円)だ。

 

では、海外子会社の在庫に含まれる未実現利益はいくらになるだろう?

 

おそらくヤマハでは、以下のようになっていると思われる。

 

1.2㌦*@120*20/120=24円

 

1.2*@120:海外子会社が保有する在庫金額(親会社から外貨建て仕入金額*期末時点の為替レート)

20/120は:親会社における利益率

 

親会社で計上した利益20円に対して、

海外子会社の在庫に含まれる未実現利益24円

 

となり、親会社で計上された利益<海外子会社の在庫に含まれる未実現利益

 

つまり、親会社で計上した利益を取り消す以上に未実現利益を取り消すことになる

 

為替換算の会計ルール上、

 

親会社の個別決算での売上の為替換算発生時レート、つまり販売した時の為替レート(この場合は@100円/㌦)を使用し、

連結決算における海外子会社の外貨建決算書の換算決算日レート(この場合は@120円/㌦)を使用するためだ。

この点もややこしいので読み飛ばしてもらって構わないが、原則的な会計ルールでは、未実現利益消去の際に適用する(在庫の)換算レートは発生時の為替レートとある。つまり親会社が販売した際の@100円だ。これを適用すれば、20円の未実現利益に対して20の取り消しとなるため、為替レートが円安に振れようが損得は無い。しかし、このような親子間の取引が継続反復的に行われる場合、子会社に残る在庫がいつ仕入れたものかを把握するのは実務上容易でない場合が多い。そのため、会計ルール上、そのような場合は、他の合理的な為替レートの使用を認めている。それが、具体的には決算日の為替レートなどになる。

 

以上の結果、期中、円安が進行すると、実際に親会社が販売した以上に円換算後の子会社の親会社から仕入れた在庫金額が大きくなり、利益率はこの場合親会社での利益率(20/120)なので、未実現利益も親会社で計上された利益よりも大きくなる

 

ヤマハの記事の意味はこの関係を指摘しているのではないかと思われる。

 

もちろん、これは為替差、つまり単価面の変動であって、それがヤマハのように何億円もの影響額になるためには、それだけ数量、つまり、

海外子会社の保有する在庫量が大きいためだろう。記事にもそれを物語る件がある。

 

ヤマハは連結全体の2割弱を欧州で稼ぐ。17年4~9月期は対ユーロで円安が急速に進んだ影響でユーロ圏で未実現利益が増え、連結ベースの利益を圧迫。営業利益が前年同期より7億円下振れした。ヤマハは在庫の回転期間が比較的長く、対ドルも含めて急速に円安が進むと連結ベースの未実現利益の増加の影響を受けやすい。』

 

と、まあ、この部分だけ切り取れば記事のような状況になるのだが、ヤマハのようなグループ取引で円安になれば円換算する以上、連結決算は増益要因になると思うんだけどな・・・

 

 

 

 

 

日本企業は出口戦略無き研究開発(R&D)なのか!?

www.nikkei.com

 

日本の会社は技術は優秀だが、

それをビジネスにするのは不得手

という日経記事。

記事は次のように指摘する。

『数字を見てみよう。まずは技術そのものを生み出す研究開発(R&D)の力だ。文部科学省がまとめた2015年の国別の企業の研究開発費では日本は00年比で26%増。だが、この間に10倍に増やした中国企業に09年に抜かれ、米中から大きく離れた3位にとどまる。』

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という状況に、会社の対応は

『電機業界をみると、日本の厳しい事情が鮮明だ。NECなど総合電機大手8社の17年3月期の研究開発費の合計は約2兆円と00年に比べ22%減った。売上高の3%減に比べ減り幅が大きい。』

じゃあ控えます・・・

って、この対応もどうかと・・・

 

そして、こういう記事(情報)が出ると、

『データのとり方がおかしい』といった意見(批判)があがる。

R&D投資の成果は即座ではなく、投資後の将来のいつかの時点で現れる。なので、時点の異なる投資対成果(効果)単年度の損益を測るのは適切ではない、ということだ。

また、経済環境が違う他国と単純に比較するのはおかしい、経済発展が目覚ましい国と日本のようなある意味成熟国を比較しても意味が薄いという意味もあろう。

 

なるほど、もっともだ。

データは、一見客観的な情報であるような顔をして、その実、データのどの部分をどう切り取るかによって意図を持った情報にすり替えられるリスクもある。

そういう意味では、僕もこの記事のデータを僕も鵜呑みにするつもりはない。

 

とはいえ、記事の指摘を感覚的に当たっているという肌感覚を持つ人も結構いるのではないだろうか?

中国と比べれば経済環境が違う云々は分かるが、成熟国の欧米諸国と比べても研究開発費に対する収益低いし、また日本自体でも年々数値は悪化している・・・

 『日米独仏韓5カ国で比べてみると、16年の日本は32倍と最低水準00年の47倍からほぼ一貫して落ち続けている。欧米勢も日本と同じく低下傾向だが、下がり方は緩やかだ。』(記事より)

 

また、R&Dは先行投資なんだからちょっと収益が下がったからと言って削減するべきではない、とか、地道な基礎研究が即座に結果につながるものではない、いつか花開くものだ、という意見もあるだろう。

 

それも分かる。

分かるのだが、

将来のいつか何かに役に立つだろうからやる、は少なくとも上場会社では通らない

不特定多数の投資家から預かったおカネだ。彼らの期待が乗ったおカネの投資先は合理的な根拠の無いものであっては困る。

 

ただ、誤解をして欲しくは無いのだが、

即座に結果を出せということではない

そういうことでは無くて、

 その研究開発投資で、

 

①成果は何なのか?

②いつ成果が得られるのか?

 

投資時点でのゴール設定を明確にし、合理的に説明するだけの計画性をもち、そして進捗管理をすべきということだ。もちろん、株式会社として取り組む以上、ゴール、つまり成果はマネタイズできるものとなる。

だから、そんなことやってみなければ分からないだろう、では困るのだ。

記事はこの点の戦略性の疎さを指摘しているのだろう。

 

もちろん、研究開発がすべて成功するわけでないのは重々承知だ。

だからと言って、ゴールの定まらない研究開発投資は、投資ならぬ浪費になりかねない。やっていること自体が目的化するおそれもある。

 

また、一旦決まった研究開発のその後の進捗管理も重要だ。期間が長期のプロジェクトや新規性の高いプロジェクトになれば、当初の計画どおりにはいかないことも大いにあり得る。そういう場合の状況の定期的な報告、計画対実績の差異分析、そして計画の変更に関する社内意思決定、いわゆるPDCAが適切に運用されているのか、ということだ。この点、R&Dは専門性が強いので、その内容を経営者が正確に理解しているかというと、果たしてどうだろうか。経営者とR&D部門(長)の意思疎通がちゃんと採られているのか、と言う点も日本企業はどうだろうか・・・

 

経営者とR&D部門のコミュニケーションと言う点では・・・

 

こういう記事などの意見が上がるとR&D部門から反論をよく耳にする。

(僕の周りに多いからかも知れないが・・・)多くは、

記者はR&Dの実態を知りもせずにデータの表面上の数字だけで指摘している、とか、こういう記事に乗せられて経営者は安易にR&D活動を緩めるべきでない、といったものだ。

 

R&D部門の方々は、記事の矛先が自分たちに向いていると思うのだろうか。

(あなたたちが)無駄なR&D活動をするからこんなことになるのだ、という批判に聞こえるのかも知れない。

(もしかしたら、そういった社内外からの批判がよくあるのかも・・・)

 

しかし、問題はそこではない。

会社のR&D戦略や予算はR&D部門で意思決定している訳ではないはずだ。提案はするにせよ、最終的にR&D戦略や予算を意思決定するのは経営者(取締役会)だ。R&D部門は、その方針にしたがって仕事をするのだから、彼らはその進捗に責任は負っても戦略や予算は経営者の責任だ。したがって、この記事もそうだが、出口戦略ないままにR&D活動を続けているのではないか、

批判されるべきは経営者だ。

繰り返すが、技術的な専門的な部分はR&D部門に任せるにしても、研究開発のゴール設定やそのための戦略、進捗管理は経営者の責任だ。これは、営業、製造、購買などの各部門の役割を調整、統合して会社全体のPDCAを回して成果に繋げていく役割でもある。

ところが、仮にこれらをR&D部門に一任となれば、このような会社全体の機能を統合した出口戦略は描けそうにないし、描けたとしても達成は難しそうだ。R&D部門は会社の1部門で、全部門を調整、統合する責任なんて普通無いし、物理的にもR&Dセンターなど他部門から独立した拠点を構えるケースもあり、むしろ社内コミュニケーション上は不向きだろう。専門性の壁もあるし・・・そして、R&D部門が何を進めているかしっかり理解していない経営者は、安易なR&D予算削減に走る・・・

そういう会社少なくないのかな、そんなことを感じた記事だった。

 

キャッシュ・フロー計算書の読み方 【久々にレクチャー系】

久々にレクチャー系。

 

アカウンティングのクラスで財務3表の読み方について講義をすると、P/Lに比べて

キャッシュ・フロー計算書(以下、CF計算書)は分かりにくいという意見がよくある(B/Sもだけど、これはまた別の機会に)。

これって馴染みが薄いから分かりにくいということで、決して難易度が高いということではないと思う。ちょっとしたコツさえつかめば実は全然難しくない。

 

 ところで・・・

会社は赤字でもすぐには倒産しないが、

キャッシュが底をつくとたちまち倒産する

 

事業の成長性も収益性ももちろん重要だが、倒産してしまっては元も子もない。

従業員、取引先、融資先など多くのステークホルダーにとっては、会社のキャッシュがどういう状況かはもしかしたらP/Lの売上、利益以上に重要な関心事かも知れない

 

ということで、今回はCF計算書の読み方について書いてみたい。

 

【CF計算書の形式】

現在、多くの会社(CF計算書の作成が義務付けられているのは上場会社等に限る)が作成するCF計算書は『間接法』で作成されている。これが、また一般のユーザーを遠ざける遠因にもなる。というのも、率直に分かりにくいのだ。

 

https://keiei.freee.co.jp/wp-content/uploads/2014/09/f87192f8614cc2b7ab84cb9bedb13119.png

 

間接法というぐらいだから、『直接法』のCF計算書もある。あるにはあるが、知る限り全ての会社が間接法で作成している。というのは、

間接法が作成がしやすいからだ。実は、CF計算書が義務付けれるまでは、キャッシュ・フロー情報は『資金収支表』という名称で、財務諸表の附表として有価証券報告書に含まれていた。この資金収支表は直接法で作成されていた。当時は注目されることも無く、間接法で読みにくくなってからキャッシュ・フロー経営の重視などで注目されるとは皮肉なものだ。

 

それはさておき、直接法と間接法の違いは『営業活動によるキャッシュ・フロー(以下、営業CF)』の部分だけで、その他の『投資活動によるキャッシュ・フロー(以下、投資CF)』、『財務活動によるキャッシュ・フロー(以下、財務CF)』はどっちで作っても全く同じ。違いは無い。

 

受講者の多くは、営業CFの作成(利益から営業CFへの調整計算)の難解さに目を奪われて、CF計算書の仕組みが分からない=CF計算書が理解できない、となるようだが、作成の仕組みが分かることとその意味するところが理解できることは全く別。

 

作成方法など知らなくても気にする必要なし。

着眼点を押さえておけばちゃんと読める。

 

そうは言っても、少しぐらいはCF計算書の構造を理解しておく必要はある。

 

【CF計算書の構成】


・営業活動によるキャッシュ・フロー(営業CF)
・投資活動によるキャッシュ・フロー(投資CF)
・財務活動によるキャッシュ・フロー(財務CF)

 

と3つのキャッシュ・フローから構成されている。簡単に説明すると、


営業CF: 一定期間に会社の事業から生み出されたキャッシュ
投資CF: 一定期間に事業の維持・成長のために投じられたキャッシュ
財務CF: 一定期間に株主、債権者から/へ調達・返済(還)されたキャッシュ

だ。

 

構造については、これだけでOK。

 

【CF計算書の着眼点】

次に、着眼点を4つ。

 

① 営業CFが黒字か?

  会社は事業からキャッシュを生み出しているのかどうかということだ。会社が事業からキャッシュを生み出していれば、営業CFは黒字になる。営業CFが赤字ということは、事業を続けるほどに会社がどんどんキャッシュが流出していることを意味する。リストラなどで一時的であればその限りでは無いが、継続的に営業CFが赤字の状況は早晩会社のキャッシュが尽きることとなる。

 

② 何に投資しているか?

  よく勘違いされるが、投資CFは赤字が普通。投資CFが赤字ということは、会社が投資にキャッシュを使っているということだ。投資CFの説明からも、事業の維持・成長のためにキャッシュを投じる(使う)ことが望ましいということだ。しかし、投資CFには、有価証券の取得や貸付金なども含まれるので、会社の事業の維持・成長につながる投資かどうかをチェックする。メーカーにおいては、製造設備などへの投資、すなわち、有形・無形固定資産の取得(による支出)などが該当する。また、M&Aだと子会社株式の取得(による支出)という項目で投資CFの項目に記載される。

最近、成長が著しい会社はメーカーに限らない。ITやECなど人材こそが会社の重要リソースという会社が増えてきている。このような会社にとっての投資とは、人材の確保、育成、研究開発などで、会計上はこれらの項目は人件費、研究開発費(R&D)としてPLの営業利益までに反映される。したがって、営業CFに反映されており投資CFには表れないので留意が必要だ。

 

③ 営業CF+投資CFは黒字か?

  会計上の定義ではないが、営業CF+投資CF(投資CFが赤字とすると、営業CF-投資CFとも)は黒字かどうかを確認する。これは、よくフリー・キャッシュ・フロー(FCF)と言われる。簡単に言うと、キャッシュ・フローの余裕度だ。毎月100の収入がある人が50使って50の余力があれば、不測の事態等への対応の余裕がある。一方、100の収入に対して100使う場合、何事もなければギリギリ回るが、突発的な事態が発生すると対応に困るのは理解できるだろう。

 

④ 営業CF>当期純利益か? 

  営業CFはPLの営業利益と関係があると誤解されやすいが、簡単に言えば、

営業CFは当期純利益のキャッシュ版だ。営業CFをよく見ると、利息の受け払いや、キャッシュを伴う特別損益、さらには法人税の支払いも含まれる。

  さて、①は営業CFが黒字か?ということで、赤字は論外(1年限りは例外)。では、黒字なら問題ないかというと、営業CF<当期純利益だと怪しい。何が怪しいかというと黒字倒産の懸念がある。PLで当期純利益が黒字で、営業CFがそれ未満(赤字も含む)黒字倒産の予兆はまさにこの点に表れる。普通に健全な会社であれば、

営業CFは当期純利益の2~3倍は期待できる。

 

【CF計算書の簡単な分析】

 

以上、4点のポイントだけ理解しておけばCF計算書は十分読み取れる(仮に作成できなくても)。

 

例えば、以下の2つのCF計算書を見てみよう。

 

              A社     B社

当期純利益 100     200

調整額   200    △300

営業CF     300    △100

 

投資CF    △100     200

 

財務CF    △100     200

 

トータル     100     300

 

なお、

日本では、CF計算書は税金調整前当期純利益から調整計算を開始するが、ここでは便宜上当期純利益から開始している。また、

間接法のCF計算書の『税前利益⇒営業CF』へ至る調整項目を一括して『調整額』として記載している。実際には、減価償却費や売上債権やたな卸資産の増減などの各項目ごとに記載される。


A社のこの期のキャッシュの面からの状況をざっくり読み取ると次のようになる。

本業から300のキャッシュを生み出し、将来の事業への投資(設備投資など)に100のキャッシュを投じ、更に借入金を100返済して財務体質を改善した。

営業CFは黒字。更に、当期純利益よりも3倍大きい。投資にもキャッシュを投じている(投資内容は不明だが、ここでは設備投資を仮定)。さらに、資金的余裕(営業CF+投資CF=200)を活用して、負債の返済(ここも仮定)を進めた、と言ったキャッシュをどう稼いだか、どう使ったかを読み取ることができる。

同様に、B社。

本業では100のキャッシュを失い(流出し)、土地などの保有する資産を売却して200のキャッシュを調達し、さらに200の借入れでキャッシュを賄った、といった状況が読み取れる。

特に、当期純利益が黒字(200)なのに営業CFが赤字(△100)。整額△300の要因が、売上債権の増加、あるいはたな卸資産の増加が主たる要因によってこのような状況になっている場合には、黒字倒産に至る予兆と言える。これは、事業が(急)成長している場合も該当するが、事業が行き詰まり粉飾まがいの行為を行っている場合もそうだ。

黒字倒産の予兆は、当期純利益黒字、営業CF赤字にそのサインが表れることを覚えておいてほしい。

最近の上場会社の倒産の事例はこのパターンが多い。

過去ブログは☟

 

tesmmi.hatenablog.com

 

B社は事業からキャッシュを生み出せていないので、何とかキャッシュを工面しようとして手持ちの資産(不動産など)を売却し、更には借り入れをしてキャッシュを確保している。もちろん、このような状況がいつまでも続くとは思えないだろう。

 

A社とB社、キャッシュ・フローの典型的な良好なパターンと悪いパターンではあったが、上記の4つの着眼点を意識すると、結構CF計算書から、キャッシュの面からの両社の状況が読み取れたのではないだろうか?

 

【キャッシュが増えていれば良いのか?】

ところで、CF計算書の読み取り(分析)をすると、

キャッシュが増えている会社の方が良好ではないか

という意見があるが、必ずしもそうは言えない。

例えば、上記のA,B社ではB社の方がキャッシュは増えている(A社:100<B社:300)。

しかし、B社の方がキャッシュに苦労していると考えられるのは先ほどの分析のとおりだ。


CF計算書から会社の何を読み取りたいかによるが、

会社が将来に亘ってキャッシュを生み出す力

があるかどうかは、会社がどの活動でキャッシュを生み出し、何に使っているかに大いに関係するからだ。つまり、CF計算書はキャッシュの増減ではなく、キャッシュ・フローの内訳にこそ意義がある。トータルでキャッシュが増えたかどうかの結果だけならばCF計算書を作成するまでもなく、B/Sなどでキャッシュの増減を把握すれば済む。

ちなみに、最近ソニーの例が日経新聞で掲載されていた。

www.nikkei.com

『ソニーが2017年から独自のキャッシュフロー(CF)計算書の開示を始めた。』ということで、記事を読んだが、最初何が独自なのか全くわからなかった(あまりに当たり前なので)が、どうやら以下がポイントのよう。

 

『資金の流れを測る上で重要なCFだが、ソニーが開示するCF(金融を除く)は

事業が現金を稼ぎ出す能力により焦点を当てたのが特徴だ。前の期の現金収支の状況をスタートに置き、営業や投資、財務活動に伴う収支を反映する。ここでは、通常は財務CFとして算入する借入金の返済や資金調達に伴う資金の増減は考慮しない。

 「借り入れを増やせば手元資金が増えるのは当たり前」(村上氏)。借り入れに伴う資金の出入りはあくまで別物とみなし、期中の増減要因から除外する。』

 

キャッシュの増減だけで会社の良しあしを判断するのであれば、事業でキャッシュを稼ごうが、銀行から借り入れようが同じ、ということになる。しかし、どっちが将来における継続性を期待できるかというと自明だろう。

 

もっとも、だからCF計算書で営業CF、投資CF、財務CFに区分してるんでしょ、何を今更・・・と言いたくもあるが。

 

 

ところで、文中、キャッシュ、キャッシュと連発しているが、そもそもキャッシュとは何かを最後に触れておく。ここでいうキャッシュとは、CF計算書上のキャッシュのことだ。細かい定義はこちらを参照☟

現金及び現金同等物 | PwC Japanグループ

ザックリ言えば、現金ないしは現金に極めて近い、要求したら短期(おおむね3か月以内)で現金化可能な有価証券ということだ。したがって、B/S上の現金及び預金の金額とは異なる。例えば、短期に資金化可能な有価証券も含まれるし、一方、流動資産に含まれる満期が3か月超の預金は含まれない。

二重課税は何が問題なのか? 【希望の党の例】

ちょっと前の記事を引用。その後、内部留保内部留保課税について様々なメディアで識者などから意見が上がり、結果として、内部留保に対する社会的な認識が高まってきたのは良いことだと思う。このブログでも過去に何度か内部留保について書いているが、これを機に少なくとも内部留保≠現金』の理解がビジネスパーソンの常識となって欲しいところだ。

今回は、内部留保課税について少し触れてみたい。
希望の党が今回の選挙公約に掲げた企業の内部留保への課税、いわゆる内部留保課税。賃上げや設備投資を促す起爆剤にするのが小池氏の狙いとのこと。

 

https://www.nikkei.com/content/pic/20171006/96958A9E9381949EE2E49A86888DE2E4E3E2E0E2E3E5E2E2E2E2E2E2-DSXMZO2191624005102017000003-PB1-7.jpg

ここで、内部留保≠現金だから、内部留保が大きいからと言って現金を貯めこんでいるとは限らない。それを理由に課税するのはおかしいという意見もあろうが、ここでは、議論の焦点をブラさないために、仮に内部留保=現金として進める。実際、10/21日経朝刊(https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171021&ng=DGKKZO22528140Q7A021C1DTA000


)でも、金額はイコールではないものの、内部留保保有現金の増減はシンクロしており、総じて、内部留保の高まりが現金をため込んでいる状況の背景にあることは言える。まあ、ここでそれを言いたいわけでないが・・・

 

https://www.nikkei.com/content/pic/20171021/96959999889DE0E0E7E0EAE3E6E2E0E2E3E2E0E2E3E5968693E2E2E2-DSKKZO2252816020102017DTA000-PB1-2.jpg


内部留保課税に反対の理由として、二重課税だから、という意見が目立つ。
これについて違和感を覚える。では、

二重課税じゃなかったら納得するのか?


税制は難しい。課税には公平性、中立性が重視されるべきであるが、言うは易しで、何をもって公平、中立なのかが判別しにくい。誰から見るかによっても公平委の定義は変わり得る。


世の中に二重課税がないかというと、既に存在する。制度として運用されている、つまり認知されているのだ。もちろん、不満が無いとは言わないが、国民全体として一定の範囲で納得が得られているのだ。

二重課税の代表的な例は
相続税、配当課税や特定同族会社の留保金課税だ。
これ以外にも、ガソリン税に対する消費税も二重課税ではないかという誤解もあるほどだ。


二重課税は、一の納税者 に対して、一の課税期間において、一の課税要件事実、行為ないし課税物件を 対象に、同種の租税を二度以上課すことを指す。したがって、ガソリン税に対する消費税などは、納税者が異なるので二重課税には当たらない。


相続税も、所得に対する所得税と相続資産に対する相続税は課税物件が異なるという見方もある。この点、日本の税制では、ザックリ言うと所得税と同様に相続税は実質的に所得にかかる税金という立て付けであるため二重課税とされる(遺産取得課税方式を採用しかつ所得税の補完税として構築されている)。


配当金は、法人の所得に対する法人税と配当を受ける個人に対する所得税は納税者が異なるという意見もある(法人実在説)。一方で、法人税所得税の前取りであり、同じ課税物件である所得に対する二重課税だという見方もある(法人擬制説)。現在の税制では、後者の立場に立つ。つまり二重課税というわけだ。ちなみに、この二重課税については、申告による配当控除(二重課税の解消)が認められている。


ヤヤコシイ部分は読み飛ばしてもらって結構だが、要するに、二重課税と言っても、
二重課税自体が多義的な不確定な概念なので、見方によって玉虫色に変化してしまい、誰にとっての二重課税、いつのどの所得等に対する二重課税なのかを明確にして議論しないとそもそも二重課税なのかどうかもよくわからないことがしばしばある。


企業の内部留保に対する課税については、法人税を課税された後の所得に対する課税であるため二重課税と考えて問題ない。しかし、当期新たに発生した内部留保に対する課税なのか、それとも期末の内部留保残高に対する課税なのかによっても話は変わる。後者のストックに対する課税となれば二重課税どころか多重課税となる・・・

二重課税は筋が良い課税かというと、それはやはり筋が良いとはいい難い。二重課税を認めると担税力を超える課税となり、課税の公平性を欠き、また競争意欲を削ぐ原因となるからだ。いくら頑張って稼いでも、稼ぎのほとんど(場合によって稼ぎ以上)を税金で取られてしまっては頑張って働く意欲は減衰するだろう。

国としても

多くの卵を得ようとして、鶏を弱らせては本末転倒
だろう。

しかし、だからといって、二重課税が即悪い、とするのも早計だ。

そもそも、何故税金が必要かと言えば、市場の失敗の補完のためだろう。

簡単に言えば、市場原理だけに任せておくと、民間の企業は自分たちに直接のメリットの期待できることしかやらない。一企業としてはそれで結構だが、しかし、国や社会全体には必要公共財)というものがある。例えば、国防、警察、外交などだ。民間がやらない以上、国がやるしかないし、そのために必要な資金を税として民間から徴収する。これが税金だ。

また、経済発展のために民間の自由競争は促進するとしても、自由競争の結果、

行き過ぎた貧富の差が生まれる場合がある。

これに対して、一定の所得の再分配を促すために課税をする。相続税などの資産税や所得の累進課税などがこれに当たる。


富裕層からすれば不平等に映るかもしれないが(そもそも平等という定義自体誰を念頭におくかによって変わる)、社会全体としては平等を促す制度ということだ。

例えば、相続性。ある意味、人間を怠けさせないための戒律的な税金と言えるかもしれない。3代続けば財産は0になるという。これは相続財産に3回(代)課税されると財産が0になる(相続財産=相続税総額)ということだ。これも勝ち組を勝ち組のままにさせない、同時に誰にでもチャンスがある、常に自由競争を促し、国の経済を成長させるという目的が税制に反映されているとも言える。同様に、特定同族会社の留保金課税も配当を小さくして(その分が内部留保になる)配当課税を逃れる(租税回避)に対する懲罰的な課税だ。これもある意味、課税の公平性がベースにある。

何が言いたいのかというと、課税の大義名分は何ですか、ということだ。
二重課税だから悪いのではなくて、その理由、目的に納得感を持たせられるか、が重要だと思う。


もちろん、社会のために必要なおカネであることが大前提だが、必要なおカネは二重課税だろうが何だろうが国民から税金として徴収するしかないのである。国民にしてみれば、額に汗して稼いだおカネだ。二重課税でなくても払いたくないものだ。


何故必要なのか、そして、社会にどう活かされるのか、

大勢として納得感が得られるのか


が議論されるべきだと思う。

 「ためられてきたお金が設備投資や配当に回る」。小池氏は6日、自らの経済政策「ユリノミクス」の目玉の一つとして内部留保課税を掲げ、その目的について、こう語った。

内部留保課税で果たして実現するのだろうか・・・

 

ところで・・・

 

内部留保金課税案に対して企業経営者(経団連とか)からの反対意見はクローズアップされるが、株主や投資家からの声があまり聞こえてこない。内部留保って株主のモノなのにね(笑)

 

中堅監査法人の合併報道に思う 【太陽・優成の例】

www.nikkei.com

 

中堅監査法人太陽監査法人優成監査法人が来年2018年7月の合併に向けて基本合意したとのこと。

 

基本的には大賛成だ。

予てより、中堅監査法人の統合、大きく言うと業界再編はもっと進めないといけないと思っている。

 

 

まず、品質の問題。特に最近は会計監査の社会的な信頼云々の問題がクローズアップされているので、監査法人の会計監査業務に対する品質の向上がクライアントである会社からもそうだし、社会全体からも求められる。

ところで、会計監査の品質と言っても、結局、

ヒト、カネ、情報に尽きると思う。ここで、会計監査の品質の定義について本来はキッチリとしておきたいのだが、ちょっとヤヤコシイ部分もあるので、ここではぼんやりと一般的な品質をイメージしてもらって良い。

ヒトについては、まずは優秀な人材がどれだけ採用できるかということだ。公認会計士資格(いわゆる2次試験を通過した公認会計士の卵で可)を持っているのだから問題ないのではないか、と思うかもしれないが、それはそれ、試験は試験。一定水準をクリアしたとはいえ個人差はある。一般事業会社と同様に、通常は大手の方が優秀な人材は集まりやすい。

とはいえ、どんな優秀な人材も一人前の会計監査人になるには育成が必要だ。試験に合格しただけの公認会計士の卵が仕事(会計監査)を立派にできるかどうかというとそうでもない(まずできない)。したがって、定期的な研修制度やOJTの質と量が重要だと思う。ここに、カネと情報が効いてくる。大手の監査法人であれば、職員に対して定期的な研修制度を提供したり、クライアントの業種も社数も多いので職員は広範囲の業務経験を得ることができる。現在は(これまでもだが)、会計に関するルールが頻度高く改正される環境であり、会計監査の現場を担当する職員1人1人がいかに正しい知識をタイムリーにアップデイトしているかは会計監査の品質に大きく関わる。また、ルールは知っていても、会計のルールには適用において判断の余地がある(どんなルールもそうだと思うが)。会計ルールの趣旨と実際の取引(会計事実)の両者を合わせて都度適切な判断をするには、やはり数々の業種や企業からの会計監査経験がものを言う。大手になれば会計監査チームの人員の質も高ければ、クライアント企業の役員、従業員の質も高い。かつ、会計監査で問題となる会計処理の質もまた高くなる傾向がある(経験上)。

また、海外とのネットワークもある。大手4社は、あずさ=KPMG、新日本=E&Y、トーマツ=Deloitte、あらた=PwCと、国際的なアカウンティングファームと提携関係にある。世界主要国に拠点があることもそうだが、グローバルな大企業のクライアント、そういったクライアントとの関係によって得られるノウハウ(監査ツール開発含む)、資金力、あるいは世界の主要国における会計士団体に対する影響力などもある国際的な大手アカウンティングファームとの提携が、また日本国内におけるヒト、カネ、情報へ影響を及ぼす。

 

このように、

監査法人の規模の違いは規模にとどまらず、会計監査の品質にも大きく影響する。

 

事業会社が監査法人を選ぶ場合、何を選定基準とするだろうか?そもそも実際のところ会計監査って何しているのかよくは知らないという会社(経営者)も多いのではないか。実際、目にするのは最後に提出される1枚の提携文言が記載された紙(監査報告書)なので、だったら安い方がいい(価格)ということになろう。とはいえ、昨今の企業不祥事、不適切会計を意識すれば、そうは言ってもちゃんとした体制の処(品質)にお願いしたい、という気持ちもあるだろう。品質に関しては、グローバルに事業展開している会社はグループ全体を同じ監査法人(海外ネットワークを含めて)に委託したいというのも含まれる。

価格と品質の均衡という点が、従来、僕が監査法人の業界再編をすべきと思う理由の1つだ。価格と品質の点において、

大手と中堅の監査法人間のかい離が大きすぎるのだ

上述したが、品質を保つにはカネがかかる。当然、かけたコストが監査報酬に反映される。記事の法人業務収入を見ても明らかだろう。監査報酬のレベルは大手よりも中堅(中小)の方が低い(公認会計士業界の目安はあるが)。

一方で、会計監査が義務付けれる上場会社、会社法上の大会社と言っても規模や事業の特殊性、あるいはグローバル展開は様々だろう。ということは、会計監査に求める品質にも幅があるのではないかと思うのだ。あまりにも高すぎる品質は不要、

会社のニーズに応じた品質を適正価格で提供できるような監査法人があれば、という意見もあるだろう。

現状は、ある程度にグローバルに事業展開するような会社であれば4大監査法人をアポイントせざるを得ない状況だ。一方で、大手になればそれなりに”規制”も多く、必ずしも会社の事業実態を斟酌した会計監査を提供するかというと果たして疑問な部分もある。この点は会計監査の品質って何?という部分になるのでここでは詳細は省く。簡単にいうと、明文化されたルールブックに沿って画一的な会計監査手続と判断をするのが会計監査の品質になってしまっている傾向がある。その結果、監査手続きが不効率化(⇒監査報酬アップ)したり、必ずしも会社の事業実態を反映した会計処理とならない場合がある。優成の小松氏の『一定の規模は拡大するものの、四大法人並みになろうとは考えてはいない。迅速で丁寧な対応ができる良さは大切にしていきたい』は、この点を指しているのだろう。当然、会社としては不満を感じるわけだが、さりとて、では監査法人を代えるといっても(他は小規模の処ばかりだし)実質的に受け皿となる監査法人がない・・・ということだ。また、4大監査法人から選べると言っても競合他社と同じ監査法人は情報漏洩などの点からも避けたいという意見もあり、

実際には選択の余地がない(から我慢せざるを得ない)という望ましくない関係が継続することにもなる。これらは会社側の立場から書いているが、監査法人からも会社に対する言い分はあるだろう。お互いのために、本当の意味での自由競争でお互いに見合った会社と監査法人を選択できる環境が望ましいのではないかと思う。

 

そういう意味で、今回の太陽・優成人の合併は歓迎すべきところだ。監査法人の合併も主導権、ポジション、給与体系と言った人事面やらこれまでの利益剰余金の取り扱いなどの課題があり、なかなか難しいのが実態。しかし、太陽の山田氏が言われるように

企業側の選択肢を広げることが社会にとって有益だ

個々の監査法人や個人の事情を超えて、会計監査の社会的意義の向上、もって社会的信頼を獲得という大儀のもと、この流れを加速してもらいたいと思う。

インタビューでは否定されているが、東芝の受け皿なんてのが今回の合併の目的だったなんてのはご勘弁願いたいが・・・