「2023年3月期の連結営業利益は前の期から2.7倍に増え、今期も3割増の見通し。独立系自動車部品メーカーとして、「徐々に魅力的な企業になっている」が、PBR(株価純資産倍率)の1倍超えにはほど遠い。「注目しない投資家が悪い」とこぼしていた。」
天昇電気工業の社長の発言とのこと。
会社としての発言なのか、個人としての発言なのか?
なお、23年5月18日時点で、同社のPBRは0.78と1倍を割り込んでいる。
社長の主張される営業利益3割増により、連結の営業利益率は22年3月期:1.2%から23年3月期:2.5%へ改善している。
確かに、営業利益は改善しているけど、PBRは営業利益の増加だけに反応するわけでない。
23年3月に東証が公表した上場会社に対するPBR改善要請の資料でも、PBRを改善するために資本コストを上回る資本収益性を達成すべきとしている。
【参考:資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について】
https://www.jpx.co.jp/equities/improvements/follow-up/nlsgeu000006gevo-att/cg27su00000048bt.pdf
そこで、同社の資本コスト(WACC)と資本収益性(ROIC)をチェックしてみる。
だが、ない…
WACCもROICも開示していない。というか、IR情報に決算説明資料もない。あまり、IRに積極的では無さそうだ。
仕方がないので、ざっくりと試算してみることにする。
まず、WACC
22年3月期の有価証券報告書(連結附属明細表)から借入金利(rD)を0.7%として、株主資本コスト(rE)をこちらもざっと8%(最近、日経新聞ではrEを8%とすることが多い)とし、これに、直近の株式時価総額:Eと有利子負債:D(22年3月期決算短信情報)からD:E=56%:44%として計算すると、
WACC=rD*(1-税率)*D/(D+E)+rE*E/(D+E)
=0.7%*(1-30%)*56%+8*44%
=4.0%
次に、ROIC
ROIC(ROCE)をNOPAT/D+Eとして計算すると、
(単位:百万円)
ROIC(ROCE)=604*(1-30%)/(7,843+6,159)=3.0%
なお、
NOPATは、営業利益*(1-税率)
有利子負債は、23年3月期の1年以内返済予定長期借入金、長期借入金、リース債務(長短)
で計算した。
結果、
ROIC=3.0%
WACC=4.0%
ROIC<WACC
ん~、投資家が注目した上でPBR1倍割れの可能性あるな・・・