売上高が激減する!? 【収益認識基準の動向】
『企業会計基準委員会(ASBJ)は20日、売上高の計上方法に関する新しい基準(収益認識基準)の導入を検討することを決めた。日本と国際会計基準(IFRS)や米国会計基準では収益認識基準が異なっている。IFRSと米国基準が2017年にも収益認識基準を統一することを踏まえ、日本でも同じ方法を採用するかを検討する。
例えば、商社などが行う仲介販売の売上高は日本では総額で計上するが、IFRSや米国基準では手数料のみを計上する。海外展開を進める企業などからは、日本でもIFRSや米国基準と同じ方法を採用してほしいとの声が上がっていた。』
ということで、いよいよ(会計基準の)コンバージェンスに拍車がかかりそうだ。
収益認識基準、売上をいくらとするか?売上をいつ上げるか?
そんなこと、選択の余地があるの?と思うかもしれないが、意外に論点はある。
例えば、売上をいつ上げるのか、という点では、日本の多くの会社は製商品を自社の倉庫から客先に出荷した時点で売上を上げている会社(=出荷基準)が多いと思われるがIFRSでは出荷基準は受け入れられない。この点は、こちらに記載しているので参照してほしい。
今回は、売上をいくらとするか、ということだが、これも従来の日本の商慣習、会計慣行とIFRSとは異なる点がある。一例が、記事の『仲介販売における手数料』の取り扱いだ。
商品を50で仕入れて100で客先に100で販売する場合、日本では売上高100(原価50で利益50)となるが、IFRSでは売上高50(利益=受取手数料は50)なる場合がある。『おたく(ノーリスクで)中抜きしているだけでしょう?』といった主観が入るかどうかは別だが、まあニュアンス的にはそんなところだろうか。
売上高はなんといっても会社の顔だ。P/Lでは当然最初に位置づけられる数値であるし、『年商100億円』という売上高が会社の信用力にもなる。その売上高が例えば半減しようものならば、会社の評価に大きな影響を与えかねない。
ということで、総合商社や広告代理店などはIFRS移行を検討する際の1つの重要な論点になっている。
と、これまではIFRS移行を考える会社にとっての論点だったが、日本基準がIFRS、米国会計基準に内容を合せるとなると、対岸の火事とも言っていられない。
加えて、食品業界や製薬業界等に見られる販売促進費、拡売費、各種リベートも現状の日本の会計慣行では、『販売費及び一般管理費』として処理されることが多いが、内容によっては実質的な『売上の値引き』と判定されると、こちらも売上高が減らされることになる。販売費及び一般管理費に値引き相当のリベートが200 含まれているとすると、P/Lは以下のように変化する。
変更前 ⇒ 変更後
売上高 1,000 売上高 800
売上原価 500 売上原価 500
売上総利益 500(50%) 売上総利益 300(62.5%)
営業利益 200(20% ) 営業利益 200(25%)
営業利益の金額は変わらないが、売上総利益や各利益率が変化することになる。
もちろん、これは会計処理だけが変わっただけで会社の行っている事業活動はなんら変更はない。数字だけで判断すると、会社の実態を見誤ることになりかねない。会社としても最終的に表現される数字だけで会社の良しあしを判断されるとすると、(家計ルールの変更による)会社の数字の変化には会計処理方法の変更にはより慎重な姿勢をとようになる(特に良くない方向に変化する場合)。不毛な議論の要因にもなりかねない。これは会社だけでなく、むしろ、外部の評価者のリテラシーの問題かもしれない。