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溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

『引当金』をざっくり理解するには?

 

 

会計を勉強中の方によく質問されるの項目として『引当金』がある。意味は何となく分かるが、具体的な会計処理や決算数値への影響がイマイチよく分からないということだ。引当金は、経営者にとっても未だ現金の入出金が起こっていないタイミングで会計処理が求められるため、経営者の感覚からズレるという意見も耳にする。

 

・引当金とは

『在庫を引き当てる』という表現を聞いたことがあるだろうか?得意先からの注文に対して在庫の有無のチェック、そして得意先へ在庫を割り当て出荷の準備をすることをいう。引き当てるという言葉には『準備をする』と言う意味がある。未だ事は起こっていないが、それに備えて準備をする、ということだ。

会計のルールでは、以下の3つの条件が揃うと『引当金』の計上が必要になる。

①将来の費用(損失)の原因が既に発生している

②将来の費用(損失)の発生の可能性が高い

③将来の費用(損失)の金額が合理的に見積もられる

 

具体例として、賞与(ボーナス)について見てみよう。

3月決算会社。社内規程で、12/1~5/30の勤務に対しては7/15、6/1~11/30の勤務に対しては12/15にそれぞれ定期賞与(ボーナス)が支払れる(賞与算定期間)とすると・・・

 

3/31の決算日時点では、従業員は(それ以前の)12/1~3/31まで働いた期間分に対しては来る7/15に支払われる賞与(ボーナス)の理由が発生したと言える(引当金の条件①)。また、過去の実績として通常、賞与(ボーナス)が支払われてきた場合などは、次回の賞与(ボーナス)もまずもって支払われると考えられる(引当金の条件②)。さらに、定期の賞与(ボーナス)が基本給の何か月分等と予め定められているような場合は支給額が合理的に算定できる(引当金の条件③)。ということで、この場合、引当金の条件①②③を満たす、3 strikes, you're out!、ということで、賞与の支給は(来期の)7/15であるが、当期3/31の決算に7/15支給分の内1/1~3/31に従業員が働いた分は金額を見積もって(50%)引当金として計上することになる。

 

・引当金を計上すると利益は減るのか?

上記の賞与(ボーナス)の例で、7/15に支給される賞与(ボーナス)を100とすると、3/31の決算にはざっとその50%の50の引当金(賞与引当金という名称)を認識することになる。この場合の引当金は、『負債』である。ざっくり言うと、まだ支払っていないけど未払賞与のようなイメージだ。ところが、会計処理は負債を認識するだけでは終わらない。前回の『複式簿記』で書いたように、会計処理は常に2つの事象が1セットとなる。この場合、負債のお相手は『費用である。

会計処理

借)賞与(引当金繰入額) 50 貸)賞与引当金 50

(賞与)引当金を認識するということは、その分の賞与という費用も同時に認識するということでもある賞与(ボーナス)の『支給』というキャッシュ・アウトのタイミングで費用が発生すると理解していると、それに先行して既に発生した従業員の勤務相当分を費用として認識する必要があることに注意したい

 

・引当金は会社にとって損なのか?

経営者の中には、『まだ支払ってもいない賞与(ボーナス)を先に費用として計上する(その結果、利益が減る)なんか損した気分だ』と言われることがある。確かに当期の決算に来期の支払に先行して認識する賞与引当金に相当する部分(50)利益が減るが、一方で、実際に支払い(100)の発生する来期の費用は50となるため、トータルの費用は100となる。

会計処理

当期(×1年)決算

借)賞与(引当金繰入額) 50 貸)賞与引当金 50・・・⑴

来期(×2年)決算

借)賞与(支払)100 貸)現金及び預金 100・・・⑵

借)賞与引当金 50 貸)賞与(引当金繰入額)50・・・△⑴

 来期(×2年)の会計処理で、当期(×1年)に引当金の認識の会計処理が反転(リバース)されることになる。言ってみれば、掛けておいた保険が使われたようなものだ。そして、引当金という保険は掛け捨てではない、ここがミソだ。当期(×1年)決算だけを見ると費用を先行して認識するので、損(その分利益は減る)に思うかもしれないが、その分、来期(×2年)の費用(賞与)は実際の支払いが100にも関わらず50(100-50)となる。当たり前と言えば当たり前であるが、会計処理の対象となる金額は実際のキャッシュの収支に一致する。実際の賞与の支払いが100の場合、引当金を計上しようがしなかろうが、賞与という費用の合計は100にしかならない。引当金を認識しない場合は、⑵の処理のみ、つまり来期(×2年)の賞与支払時に賞与(ボーナス)費用を100認識するだけだ。つまり、引当金によって何が変わるのかというと、支払に先行して賞与(ボーナス)という費用の一部を認識する⑴ことにより、賞与100が当期(×1年)50と来期(×2年)50に分割されたということだ。何をもって損得と考えるかにもよるが、少なくとも通算した費用合計金額と言う点では、引当金は損にも得にもならない(この分割、時間差を使った利用価値は色々あるが・・・また別機会に)。

 

・貸倒引当金は何故負債でなくて資産側に『△』で記載するのか?

貸倒引当金は、販売代金の未回収分(売掛金)の内、会社が(その得意先から)回収できないと見込んだ金額である。例えば、ある得意先に商品を100販売し、その回収が3か月後の場合、会社がその未回収代金の内10は回収不能と見込むことは額面100の未回収代金を実質90と評価したことになる。

この場合、BSでは資産の部に以下のように表記される。

B/S:(流動)資産の部

売掛金     100・・・実際の販売代金

貸倒引当金  △10・・・会社が回収不能と見込んだ分

(差引    90・・・会社は90しか回収できないと考えたという意味)

何で負債でなくて資産側に△なのか?ということだが、負債は簡単に言うと第3者に対する債務であり、債務は第3者に金銭等を弁済することによって精算される。ところが、貸倒引当金は会社が自分の資産(売掛金)の価値を評価したにすぎず仮に事が起こった場合、何が起こるかと言うと会社にとって代金が実際に未回収(という損失)が発生するのであり第3者に対して金銭が支払われるわけではないため負債とは言えないのである。専門的になるが賞与引当金のような引当金は『負債性引当金』、貸倒引当金のような引当金は『評価性引当金』と言う。負債ではないの負債の区分に含めることはできないが、(会社の資産価値を減らすという意味で)会社にとってマイナスの影響を及ぼすということで、プラスのマイナスはマイナス=資産のマイナスは△ということで、資産側に△マークで記載となる。