以前、ラーメン店のコンサルティング会社の例を取り上げて、『失敗しない経営』の意味 の記事を書いた。
その際のポイントとして。
①固定費を抑えて利益の出やすい体質を作る
②先におカネを払わないような資金の流れを作る
の2点を取り上げた。
利益を出やすい体質作りのためには、固定費を出来るだけ抑えるのが望ましいのだが、次の質問をいただいた。
売上 100万円
変動費 20万円
限界利益 80万円
固定費 60万円
利益 20万円
の会社が売上を2倍にすると、
売上 200万円
変動費 40万円
限界利益 160万円
固定費 60万円
利益 100万円
と利益が5倍になる。一方、
売上 100万円
変動費 60万円
限界利益 40万円
固定費 20万円
利益 20万円
の会社が売上を2倍にしたら
売上 200万円
変動費 120万円
限界利益 80万円
固定費 20万円
利益 60万円
と利益は3倍にしかならない。
ということは、固定費が変動費より高い方が売上利益率が高く儲かるのだろうか?
なるほど、である。
確かに売上が2倍になった場合、固定費型(固定費の割合>変動費の割合)方が利益の増加率が大きい(5倍>3倍)。
これは言葉の定義の問題かもしれないが、改めて書いてみたい。
①固定費を抑えて利益の出やすい体質を作る
の『利益が出やすい』は、利益が出るタイミング(売上高)が早い(小さい)、ということである。
【固定費型】
売上 100万円
変動費 20万円
限界利益 80万円
固定費 60万円
利益 20万円
の場合、損益分岐点売上高は、75万円(固定費60万円/限界利益率0.8)であり、
【変動費型】
売上 100万円
変動費 60万円
限界利益 40万円
固定費 20万円
利益 20万円
では、損益分岐点売上高は、50万円(固定費20万円/限界利益率0.4)となる。
固定費型では、売上が75万円に達するまでは赤字であるのに対して、変動費型では50万円の売上で損益トントン(利益=0、それ以上の売上で黒字)となる。
つまり、固定費を低く抑えることによって、(相対的に)低い売上高でも利益が出る、この点を指して、『利益が出やすい体質』と言われる。言い方を変えると、100万円の売上が減ったとしても赤字に陥るタイミングが遅い(固定費型だと75万円だが変動費型では50万円)。 守りに強いイメージだ。
これに対して固定費型は、売上が一度損益 分岐点を越えると爆発的に利益が出る。この点は魅力的だが、売上が損益分岐点を下回ると一転大赤字となる。攻めに強く守りに弱い イメージだ。固定費型では、赤字に陥らないようにとにかく(限界利益をキープする限りは)売上を増やすことがプライオリティーとなろう。という事もあり、売上の規模が安定して見込めない事業のスタートアップ時には、出来るだけ固定費を抑えて少ない売上でも利益が出る体質をまずは作ると言うのは理屈に合うのである。