溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

企業不正を発見するための最善の手段は・・・

『ACFE(公認不正検査士協会)の2014年度の報告書によると、不正が発覚するのは内部通報が42.2%とダントツに高い数字だ。(内部監査14.1%(3位), 外部監査3.0%(7位))これは監査等単体による不正会計発見の限界を示唆している。つまり、不正会計抑止のためには、自発的に企業内風土が正しい方向性に向く仕組みが必要なのだ。』

 

企業不正について書かれた記事である。私も仕事柄、企業不正・不祥事の防止、摘発に関与することもあり、ACFEの報告書には目を通す。

アメリカのSOX法を受けて日本にJ-SOX制度が導入されて早8年余り、最近はコンプライアンスやさらにはコーポレートガバナンスといったように、いわば会社(経営者や従業員も含む)の暴走を抑止する制度が重視されつつある。

では、実際に何が会社の中で起こっている不正や不祥事を発覚させているかというと、記事にあるとおり、内部通報によるものだ。いわゆる従業員や会社関係者によるタレこみだ。ACFEのレポート(2014年度)では、世界中の会社で摘発された不正(調査対象とした約1,350件)の内、実に42.2%がTip(内部通報)によるものということだ。

(参照:http://www.acfe.com/rttn/docs/2014-report-to-nations.pdf

 

 

よくよく考えると、まあそうかな、と思うのだが、じゃあ、内部統制(特にJ-SOX)って一体なんなの?と思う方もいるのではないだろうか?もっとも内部通報制度も内部統制の一環なのだが・・・

ともかく、社内で発生している(かもしれない)不正や不祥事を早期に発見するためには内部通報制度を充実させることが有効であることは言えるだろう。

今やほとんどの上場会社で内部通報制度を導入しているのはJ-SOXの数少ない成果の1つかも知れないが、内部通報制度に関しては、制度を導入するだけでなく、実際の運用、活用させるのがポイントだ。

つまり、

・制度の趣旨やその通報先を従業員に周知徹底すること

・通報者保護を徹底すること

が重要になる。制度があっても周知されなければ有名無実だし、通報先が社内の部署のみというのも通報者は躊躇するだろう。そして、通報者は見ようによっては仲間を裏切った危険人物とみなされて不遇な待遇を強いられることになると、これも機能しない。

例えば、エンロンの不正を告発したこの方は、その後大変なご苦労をされることなった・・・

エンロン粉飾、内部告発者の過酷すぎる半生 | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

 

また、このような仕組みを円滑に運用する施策を打ったとしても、内部通報制度が適正に運用されているかどうかは測りにくい。というもの、実際に会社内に不正、不祥事が発生していなければ、通報は0だからである。つまり、通報実績が無い、少ないことが実際にそのような事象が発生していなっからなのか、それとも制度の周知徹底や通報者保護が不十分だからなのかが掴みにくいということだ

これについては、こんな記事もある。

初公開!「内部通報が多い」100社ランキング | CSR企業総覧 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

『ランキング上位を見ると、1件当たり100人前後の企業も目立つ。100人未満は100位までで37社と多数を占める。この「100人に1人が通報する」という状態は厳密な数値ではないが、ひとつの目安となる可能性があるかもしれない。』

もちろん、業種や規模にもよるが、このようなデータも1つの目安になるかもしれない。これよりもあまりにも年間の通報数が少ないともしかしたら内部通報制度が正常に機能していないのかも知れない・・・

ちなみに、『 東芝は29位(61件)。この61件が第三者委員会で「少ない」と指摘されたようだ。1件当たりは589.2人。上位企業と比べると数字はよくない ようにも見える。たとえば6位のダイハツ工業は同64.9人と東芝の約10分の1。件数当たりで従業員数に10倍の差があることになる。』

ということだ。

 

ちなみに、摘発手段の第2位は、マネジメントレビュー(16%)だ。マネジメントレビューとは、簡単に言うと定期的(月次等)の予算実績比較だ。経営者や事業部門長あど会社のビジネスに精通した者であれば、『何でこの時期にこんな売上が?』、『売上と在庫のバランスがおかしい』、『この拠点にこの費用は不自然』等のある程度の金額レベルに達した不正等はマネジメントレビューで発見できる可能性が高い。業務フローにおける申請・承認手続き、ダブルチェック、職務分掌もさることながら、効率と効果を目的としてマネジメントレビューを強化(というかちゃんとやる)することをお奨めしている。

 

最後に、外部監査の摘発率は何と3%(しかも年々低下)・・・

今もまさに大手監査法人が企業不正を見抜けなかったとして問題視されているが、外部監査による不正の摘発は世界的に見ても期待できるとは言い難い数値だ。もっとも、大規模な会計不正(粉飾決算)は知ってはいるが適正に処理できていないということだろうが(参照:東芝の不適切な会計処理 監査法人の責任は? - 溝口公認会計士事務所ブログ)・・・

これはある意味仕方がない。今では不正摘発も(外部)会計監査の一環ということになっているが、はっきり言って無理だろう。会計不正はともかく個人の不正(資産の横領着服など)はやる方もある意味必死、周到に準備も後始末もしている。表面上からは不正の形跡はうかがえないことが多い。会計監査は警察や国税のような強制調査権は無いし、その手続きも限定されるため、仮に怪しいと思っても証拠を突き止めるまでに至らないこともある。そして、そもそも会計監査の担い手である公認会計士は不正発見の訓練を受けていない・・・さらにはどちらかというと『善良な人』が多いので不正する側の思考が働きにくい(これは教育や訓練で補えるが)。やるならやるでそれ相応の準備をしないと社会からの期待ギャップが更に大きくなるだけなのにな、と最後に少しだけボヤキ・・・