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溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

電通の不適切なネット広告取引の件に思う 【広告主の視点から】

news.yahoo.co.jp

 

なんと!、そして、さもありなん・・・

ニュースの最初の印象がそんな感じだった。

 

(委託者側にとって)購買取引というのは元来、キックバックやら

不正のリスクが高いエリア(業務範囲)として認識されるが、会計監査では従来、中でも広告宣伝費は不正あるいは誤謬(間違い)リスクが高いエリアとして位置づけられる。理由は、担当者個人に業務が張り付く、価格も他との比較が容易でないとか物が動かないため取引の実証検証がし難いなどだ。

 

自分自身の経験でも、(委託者側の)会計監査で広告宣伝費のエビデンス(証拠書類)を求めた際に、そんなものは保管していない、といった回答をする会社もあった。エビデンスとは、広告が新聞雑誌に掲載された(その雑誌、新聞)やTVCMであればその実績、レポートが相当する。電通電通だが、広告主の側での性善説に立った「ちゃんと仕事してくれているはず」という(大)企業を無条件に信用する傾向や広告を社内承認、発注すればお役御免といった意識の問題なのかな、とも思ったが、今回の例はどうもそういう訳でもなさそうだ。

 

電通の件で問題となった「ネット広告」、中でも最近の主流といわれる

運用型広告」これがなかなか複雑な仕組みのようだ。

以前の新聞雑誌に何回掲載といった、例えば1か月100万円で10回といった契約であれば、委託者の会社もちゃんと依頼した広告宣伝が行われたかどうかの検証が可能だろう(前述の例は、それをも怠っている会社もある、ということ)。

ところが、運用型広告というシステムはそう単純でもないらしい。詳述は避けるが、要は、広告媒体と顧客(広告主にとってはターゲット)そして、広告主のコンペティターの関係によって、意図したように広告宣伝ができるとも限らない、ということらしい。そして、できるだけ委託者である広告主の意図に沿うように広告宣伝を運用する、というのが電通のような広告代理店の期待役割付加価値、ということらしい。

 

広告代理店側からすれば、従来の広告主の意に沿った、あるいは期待を上回るような顧客に訴求する広告宣伝を提案するだけではなく、それをいかに効果的に顧客にアピールするかも求められることになる。期待値が上がった感があるが、これって、委託者(広告主)に理解されているのだろうか?その辺も今回の問題の根っこにあるようにも思うが・・・

 

それはともかく、広告代理店に対する期待値が上がり結果として広告代理店が担う役割が複雑高度化すると、同時に委託者(広告主)サイドとしては、期待や目標が達成されたかどうかの検証も従来のように単純にはいかなくなるというのも想像に難くない。

 

電通の件では、重要な顧客であるトヨタが疑問を呈したことがきっかけで露呈されたとのことだが、他の100件超の顧客の中にも同様の疑問を持った会社も少なくないだろう。

ところが、複雑高度化したネット広告の仕組みや広告代理店の機能(期待値)が高まるにつれ、委託者サイドからするとその検証が困難になり、怪しいな、と疑問を持ったにしてもそれを検証する手立てがない、結果、広告代理店から提出される(実績)レポートを信用せざるを得ない、という状況ではないだろうか。

 

このような状況で今回のような問題が発生すると、委託者の会社にとしても「代理店を信用していました」、「我々は騙されたんです」と主張はすれど、外部の利害関係者からは、

そういうリスクに対してどう対応していたんですか?

という指摘もあろう。

広告宣伝費が実際に発生したものかといった会計監査マターや広告宣伝が経営判断として適切なものだったのかといった業務監査マターを株主など対外的に説明するためにも、意図した広告宣伝が適切に行われたというエビデンスを確保しておきたいだろう

 

そういったニーズに対する対応として、

SSAE16号、監査・保証実務報告実務指針第86号

(以前はSAS70、監査基準委員会報告第18号と言った。懐かしいなあ)がある。

興味があれば詳細は調べて欲しいが、簡単にいうと、

アウトソースなどのサービスを提供している事業者が(委託者に)提供する情報などのサービスが適正に委託者に提供されたかどうかを社内でチェックする体制が適切に整備・運用されているか、を外部の会計監査人(監査法人)が監査する、という仕組みだ

電通の例で言えば、電通が広告主に提供する広告宣伝の実績レポートが適正なものであるといえるだけの社内チェックが効いているかどうかを監査する、ということになる。

 

こういった社内のチェック体制について外部からのお墨付きがあると、広告主も安心して取引できるのではないだろうか?

 

ところで、このような仕組みは実は10年以上前から日本にもあり、内部統制報告・監査制度(J-SOX制度)でも要求されている。

多くの会社が、給与計算、受発注、広告宣伝業務などを外部の事業者にアウトソースしてその結果を自社の決算数値に反映させている。本来はこのような監査サービスは既に普及して然るべきなのだが、J-SOX施行当初でも中々このようなサービスに対して、一定の理解は得るものの、おカネを払ってまでというと・・・という会社が多い印象だった。そういうこともあって、会社におけるアウトソースしている業務や取引金額の重要性といった点から必ずしも外部監査までは不要といった落としどころにしていたようにも記憶する。

 

今回の一件がアウトソース業務に対する内部統制監査が改めて見直される機会となると良いと思う。