監査承認なしで決算発表するとどうなるのか? 【東芝の例】
延期されてきた東芝の2017年3月期決算の第3四半期の決算発表が本日なされた。
噂されてきたように、監査法人であるPwCあらたの監査『承認』無
しという異例の決算発表となった。
ところで、よく報道される監査法人の『承認』だが、どういう意味合いで使っているのだろうか?
同様に監査法人の『お墨付き』という表現もされるので
『監査法人が会社の決算は正しいと判断する』ということを意味しているのだろう。
とすると、今回の東芝の、監査法人の承認なしに決算発表は間違いではないが、
ちょっと誤解されやすいので監査意見の種類について書いておきたい。
と、その前に・・・
今回の第3四半期決算について、東芝は、決算短信(いわゆる決算発表)と四半期報告書の提出を同日に行っているが、監査報告書の有無が問題になるのは四半期報告書だ。決算短信には監査報告書の添付は不要だ。金商法に従って作成提出される決算書(四半期報告書、有価証券報告書など)は監査法人か公認会計士による監査報告書を添付する必要がある。
監査法人が会社の決算書を会計監査した結果として表明する結論(監査意見)は
4種類ある。
今回の東芝の例では、四半期決算なので監査意見ではなく、正確には四半期レビュー意見なのだが、ややこしくなるので、監査意見として記載。
①無限定適正意見
:会社の決算は重要な点において会社の実態を概ね適正に表している。
報道される監査法人の承認とはこれを意味すると思われる。
②限定付適正意見
:一部不適正な部分があるが、それを除けば決算書は会社の実態を概ね適正に表している。
ここまでが、承認ラインと言えるだろう。
③不適正意見
:問題が大きすぎて、会社の決算書は会社の実態を適正に表していない。
④意見不表明
:会社の決算がメチャクチャ、あるいは根拠資料が提示されず会社の決算書が適正かどうか判断できない。
東芝のケースは実は、④『意見不表明』に当たる。実は、監査法人から何の結論も得ていないわけではなく、監査法人が結論を出せるような説明や資料の提示がなされなかったので、いかんともしがたい、という結論(意見)を入手している。
東芝の四半期報告書を参照☟
実はこれが問題なのだ。
監査意見のうち、不適正意見と意見不表明は
東証の上場廃止基準に抵触するのだ。本日の記者発表でも上場維持についてのやりとりがあったのはこのことだ。
では、仮に、監査報告書(四半期の場合はレビュー報告書)を一切
添付せずに四半期報告書を提出したらどうなっただろうか?
と、いってそんな事例があるかどうか・・・
というのも、金商法にもその場合の罰則規定が見当たらない(と思う)。というのも、監査法人などの監査証明が添付されていない報告書は受理されないと思われる。
結果として、期限までに(東芝のように延長申請していなくて)報告書が提出できなかった(不提出)と取り扱われると思われる。
有価証券報告書、四半期レビュー報告書が不提出となった場合は、会社の経営者や法人に対して、刑事罰(経営者であれば懲役または罰金 例:有価証券報告書の場合は5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、またはその併科)、課徴金(直前年度の監査報酬に相当する額 有価証券報告書の場合、少なくとも400万円)が課される。
ちなみに、会社法決算の場合、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の
『大会社 』は監査法人等による会計監査が義務付けられるが、大会社になりたてでうっかり忘れていたというケースがある。この場合は、100万円以下の過料となる。
不提出だったら1,000万円以下のペナルティで収まるかというと、
不提出でも意見不表明でも、上場廃止基準に抵触する・・・
ただし、基準では、意見不表明の場合は上場廃止の是非を検討する、となっている。もしかしたら、とりあえず、次に繫げるため、
と言うことだろうか。
とは言え、制度が許しても、市場が社会がここまでなった会社を受け入れるか、と言う問題が立ちはだかるだろう…
今後の展開をとりあえずは見守ることにする。