『起業家のゴールといわれてきた新規株式公開(IPO)。だが上場を追わないスタートアップが日本でも広がってきた。煩わしい上場審査に気を取られている間に、成長のチャンスを失うのは嫌だ。こんな起業家の思いが起点だが、空前のカネ余りがもたらした異変でもある。マネーとスタートアップの新たな関係は、この先ずっと続くのだろうか。』
スタートアップ(ベンチャー企業)のゴールの1つはIPOと言われて久しいが、最近その流れに変化が見られるという。
『デロイトトーマツが8月末にまとめた起業家100人のアンケートで、将来の投資回収手段として「IPOをめざす」と回答したのは21%にとどまった。これに対し、72%が「IPOと他社からのM&Aの両方を検討しうる」と答えた。』
株式市場への上場を目指すよりも非公開のまま他社への事業売却(M&A)を希望するベンチャー企業が増えているとのことだ。
会社の目指すところはそれぞれだし、これまでもそういった会社が無かったわけではない。上場会社でも、最近再上場したワールドのようにMBOによって非上場化する例も少なくない。
しかし、IPOを目指さないベンチャー企業が増加傾向にある、というのはベンチャー企業を取り巻く事業環境に変化があったと考えられる。
『非上場のままなら顧客開拓やサービス開発など、赤字を覚悟で積極的な先行投資ができる。「成長スピードが落ちればスタートアップではなくなる」。クラウド会計ソフトのフリー(同・品川)のCFO、東後澄人(37)はこう語る。』
理由の1つがこれだ。上場企業となれば四半期ごとに投資家から成果を追及されれる。まだまだこれから事業を大きく成長させないといけない会社からすれば、そんな環境ではとても中長期的な視野に立った事業投資はできない、ということだろう。
『貸し手優位が当たり前だった時代、スタートアップ経営者の悩みは「資金調達の難しさ」だった。銀行も大企業も小さな会社に冷たく、ベンチャーキャピタルも規模が小さすぎてなかなか当てにならなかったためだ。だが今は「(顧客を獲得し)売り上げを立てる方が資金調達より難しい」と打ち明ける経営者すらいる。』
また、上場の大きな目的である資金調達についても、昨今の空前のカネ余り現象
により、行き場を失ったカネがベンチャーへの投資に回るということだ。
こんな事業環境であれば、上場会社としての面倒なしがらみに縛られることなく資金調達ができるなら敢えてIPOを選択する必要はないという気持ちも分かる。
主義主張の異なる不特定多数と会話するよりも、意見を同じくする少数で会話したほうが話も通りやすいしスムーズだ。
分かるんだけどなぁ・・・
でも、それって、
周りをイエスマンで固める
ってことにならない?
株主、投資家は我々のビジネスを分かっていない、
と嘆く経営者もいるが、ある意味それは当然のことだ。
経営者ほど会社のビジネスを理解している者がいるわけがない。周りが自分と同じ意見と思うことがそもそも錯誤だ。理解が不十分、あるいは意見が異なる立場に対してどう理解を得るかを前提に説明するスタンスが必要だ。
デビルズ・アドボケイトじゃないけど、自分の意見や考えが常に正しいとは限らないし、批判的な意見に揉まれる異なるよって自分の意見や考えが洗練されることもある。
もっとも、株主、投資家といっても一枚岩ではないし、それぞれの会社に対する期待も違う。全ての意見が理に適ったものとも限らない。
一方の株主、投資家にとっても
言ったもん勝ち的
な要求は慎むべきだし、またそれを抑制するためにも
ある程度のビジネスや数字に対する理解は必要だと思う。
一部の行き過ぎた要求に対しては株主、投資家間で自浄作用、しら~っと、
こいつ、何言ってんだ?
的な冷ややかな対応とか、が働くことを期待したい。
じゃないと、さすがに会社に同情する・・・
株主、投資家にとっても、別の意味で
鶏と卵の関係
だ。大きく成長してたくさん卵を産んでもらった方が良いだろう。
上場か成長か
本来、両者は対立するものではない。
あくまで運用の問題だと思う。
会社、株主、投資家、三者三様ではあるが、利害が全く一致しないということはないだ。共有できる部分は必ずある、基本的には同じ方向を向いているはずだ。
自身の思いや要求を持つことは良いが、相手の意見を尊重しつつ議論をすることによって、3者にとって望ましい会社の将来を共に作っていく姿勢を意識することで解消することはできないものだろうか。
こんなこと、小学校で当たり前に習うことなのにね・・・