溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

四半期報告における有価証券評価損 ~黒崎播磨㈱の例~


Yahoo!ニュース - 黒崎播磨、伯社株評価損で純利益下方修正 3月期 (日刊産業新聞)

黒崎播磨は5日、2014年度10―12月期に有価証券評価損10億3700万円を計上すると発表した。ブラジルの耐火物大手、マグネジッタ社の株式時価が簿価の2分の1を下回ったため、減損処理する。15年3月期の連結純利益予想を前期比27・4%減の14億2800万円と昨年11月時点から6億7100万円下方修正した。』

 

2008年にグローバル展開の強化を図るために第3者割当の方法により資本参加(3%)したブラジルの大手耐火物メーカーであるマグネジッタ社の株式時価の低下に伴い、当連結会計期間の第3四半期決算において減損損失(有価証券評価損)を計上するというアナウンスである。

同社のプレスリリースをチェックしてみると面白い情報があったので紹介したい。 

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/53520/0ad17883/7f78/4db4/ae20/ff15bbea6e78/140120141226099789.pdf

プレスリリースでは、当期の連結業績予想の修正理由として、平成27年3月期第3四半期末において保有する上場株式のうちブラジルの大手耐火物メーカーであるマグネジッタ社の株式の時価が簿価の2分の1を下回ったことから、特別損失として、同社株式の減損処理による有価証券評価損を計上するため、としている。

そして興味深いのは、
『なお、平成27年3月期末の時価により、平成27年3月期において、計上すべき有価証券評価損の額が変動する場合、若しくは、有価証券評価損を計上しない場合があります。』

としている点だ。

 

不思議な感じがするのではないだろうか?当期第3四半期決算で有価証券評価損(約10億円)を計上するのではないの?その金額が変動したり、ましてや『有価証券評価損を計上しない場合がある』とはどういうことか?一旦、計上した評価損はどうなるのか?

 

実は、四半期決算における有価証券評価損には2つの処理方法が認められている。

 

有価証券の減損(評価損)処理は、年度末においては、切放し法のみだが四半期決算では、継続適用を条件として四半期切放し法と四半期洗替え法が認められている。

四半期切放し法は、減損処理を行った後の四半期会計期間末の帳簿価額を時価等に付替えるが、四半期洗替え法では四半期会計期間末における減損処理に基づく評価損の額を翌四半期会計期間の期首に戻入れ、常に期首の帳簿価額と四半期会計期間末の時価等を比較して減損処理の要否を検討する。

言葉で説明するとややこしいので、簡単な例を使って説明する(税効果は無視する)。

 

現時点は、第1四半期(Q)末であり、第2四半期以降のある保有株式の時価が以下のように推移したとする。

      当期首  第1Q末(減損)  第2Q末   第3Q末   当年度末
 株式の時価   100    40        70     50     80

 

四半期切放し法を採用している場合

・第1Q期末
(時価が著しく下落したため減損処理)
(投 資 有 価 証 券 評 価 損) 60 (投 資 有 価 証 券) 60

  
・第2Q期末
(減損後の帳簿価額 40 の時価が70 になるので評価差額の計上)
(投 資 有 価 証 券)30 (その他有価証券評価差額金)30

 
・第3Q期末
(第2Q期に計上した評価差額の戻入)
(その他有価証券評価差額金) 20 (投 資 有 価 証 券) 20
(帳簿価額 40 の時価が 50 になるので評価差額の計上)
(投 資 有 価 証 券)10 (その他有価証券評価差額金) 10

 
・第4Q期首
(第3Q期に計上した評価差額の戻入)
(その他有価証券評価差額金)10 (投 資 有 価 証 券) 10

 
・年度末
(帳簿価額 40 の時価が80 になるので評価差額の計上)
(投 資 有 価 証 券)40 (その他有価証券評価差額金) 40

 

年間通じてのトータルは

PL・・・有価証券評価損 60

BS・・・投資有価証券  80 

    その他有価証券投資差額 40(=80-40)

 

四半期洗替え法を採用している場合

・第1Q期末
(時価が著しく下落したため減損処理)
(投 資 有 価 証 券 評 価 損) 60 (投 資 有 価 証 券) 60

・第2Q期末
(第1Q期で計上した減損損失の洗替え)
(投 資 有 価 証 券) 60 (投 資 有 価 証 券 評 価 損) 60

減損損失洗替え後の帳簿価額 100 の時価が70 になるので評価差額の計上)
(その他有価証券評価差額金) 30 (投 資 有 価 証 券) 30

・第3Q期末

(第2Q期に計上した評価差額の戻入)
(投 資 有 価 証 券) 30 (その他有価証券評価差額金) 30

(帳簿価額 100 の時価が 50 になるので評価差額の計上)
(その他有価証券評価差額金) 50(投 資 有 価 証 券)50

・第4Q期首
(第3Q期に計上した評価差額の戻入)
(投 資 有 価 証 券) 50 (その他有価証券評価差額金)50

・年度末
(帳簿価額 100 の時価が 80 になるので評価差額の計上)
(その他有価証券評価差額金) 20 (投 資 有 価 証 券) 20

 

毎四半期ごとに一旦認識した評価損等の処理をチャラ(=洗い替え)していることがわかるだろうか?

年間通じてのトータルは

PL・・・有価証券評価損  0

BS・・・投資有価証券  80 

    その他有価証券投資差額 20(=100-80)

 

四半期切放し法と四半期洗替え法では年度間の処理では相違が生じるのが分かるだろうか?四半期洗替え法では、当期首帳簿価額 100 が期末時価 80 のため、”著しい価値の下落”には当たらず期末において減損処理(評価損)は不要だが、四半期切放し法では第1 四半期において計上した減損処理が期末においてもそのまま確定することになるため、年度通算の損益インパクトが異なる(なお、いずれの場合もBSの投資有価証券の金額は80で同じ)。

一般的には、四半期洗替え法を採用している会社が多いと考えるが、これは、会社法決算との整合を図ることがあるとも言える。