溝口公認会計士事務所ブログ

京都市在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。日頃の業務の中で気になったことを書いています。

持分法投資損失とは何か? 【LIXILの例】

『LIXILグループは21日、中国で水栓金具を手掛けるドイツ子会社、ジョウユウが破産手続きの申し立てを検討していると発表した。破産した場合、410億円の持ち分法投資損失が発生する可能性があるという。』

 

持分法による投資損失とは持分法という会計処理で登場する項目だ。日本の会計ルールでは通常、PLの営業外損益に表示される。、多くのグループ会社を抱える会社がグループ会社全体の業績や財政状態を表す連結決算書の作成手続きの1つである。

一部の例外を除き、投資対象会社の議決権の20%以上~50%以下を保有する場合に適用される。50%超を保有する連結子会社の会計処理と異なり、自身の保有する議決権部分のみを連結決算に取り込むことが特徴だ。

 

簡単な例で説明する。

P社が、S社の議決権の40%を250億円で取得したとする。

(会計処理 借方:投資有価証券 250億 貸方:現金及び預金 250億)

 

次の年にS社が50億円の利益を出した。このうちの40%、20億円はP社のものだ。P社にとっては、250億円の投資が更に20億円価値が増したことになる。株の値上がり益のようなものだ。

(会計処理 借方:投資有価証券 20億 貸方:持分法による投資利益 20億)

ということで、P社は合計270億円の投資(株式の価値)を持っていることを表すことになる。もちろん、S社が損失を出せば損失の40%はP社が負担することになる。例えば、S社が100億円の損失を出せば、40%、40億円はP社の責任となる。

(会計処理 借方:持分法による投資損失 40億 貸方:投資有価証券 40億)

この時点では、P社の保有する株式の価値は230億円(250億+20億-40億)となる。

持分法は、当初の投資額に対してその後の投資対象会社の業績の内持分に応じた割合を反映していく手法である。

20%以上の議決権があれば、一定の経営に対する影響力もあるし責任もある。また、業績に関する情報も手に入るだろうから、責任部分を自社(グループ)の決算に反映すべきという考えである。

で、今回、LIXILは約40%の投資対象の独グループ会社(グローエ社)の子会社が債務超過により破産申請したということで、投資、株式がいわば紙くずになった訳だ。

ということで、投資した250億円が紙くず、つまり250億円が損失となったので、持分法による投資損失が250億円となる。

通常、株式会社の場合は出資者は出資した金額以上の責任は負わない(株主有限責任)。ところが、今回LIXILのように株主間で債務保証を引き受けるような特別の約束をしている場合は追加の責任が生じる場合がある。

『損失の内訳は株式関連が250億円、債務保証が160億円としている。』

破産申請した会社に対して160億円の債務保証があり、投資額250億円に合わせてこの分を含めて合計410億円の持分法による投資損失が見込まれるというわけだ。

 

それにしても、40%程度の投資の会社(の子会社)、マジョリティーを持っていない、極論を言えば経営意思決定を持っていない会社に対して、債務保証を引き受けるとは・・・もちろん、諸処の事情はあったとは推察するが、別の記事でも藤森社長は、

『 (70%以上の株式を持つ)グローエも当然、ガバナンス(統治)は徹底してきたと思う。だが、もしグローエに甘い点があったなら、しかるべき対応をしなくてはならない。』

『ジョウユウは中国で事業を展開しているが、LIXILが買収した独グローエの子会社で、ドイツの証券取引所に上場している。4月中旬に中国の銀行から『支払いを受けていない』との報告があり、おかしいと思って調べ始めた。それまではジョウユウという会社を信頼していた

と、言葉尻を捕まえるつもりはないが、何ともナイーブ感が否めないのである・・・