溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

四半期情報開示は不要なのか?

 

r.nikkei.com


少し前になるが、日経に
四半期開示は不要か?
と言う記事があった。

四半期情報の開示(四半期報告制度)は、2008年4月1日開始事業年度から義務化された。対象は上場会社等。つまり、上場会社はマスト。非上場会社でも有価証券報告書を提出している会社(継続開示会社)は半期報告書の代わりに四半期報告書を提出することもできるというもの。

四半期報告制度導入以前は、上場会社等は半期報告書を開示していた。想像に難くないが、

イムリディスクロージャー(適時開示)が変更の趣旨だ。要求したのは、投資家。

投資家の投資行動の変化、投資期間(投資してから収益を認識するまで期間)が短期化したことが理由とされる。
四半期情報はアメリカで既に導入されており、日本の株式市場に外国人投資家の存在感が増したため、彼らの要求を日本市場も受け入れた、ということだ。

さて、四半期報告制度、そもそも導入時に
本当に要るのかな?
と疑問だったのを覚えている。

従前から半期決算情報を含む半期報告書制度があるわけだし、四半期といっても
短縮期間は90日(3か月)。


その90日が勝負を決めるんだ!!と言われれば、そうなんかなぁと言わざるを得ないが、当時の僕には90日を短縮する積極的な理由はイメージできなかった。

また、半期の業績報告の間、会社から何も情報開示が無いかと言うと、そうではない。上場会社は、一定の要件を満たす重要イベント(社長の交代や業績の上方下方修正など会社にとって重要なイベント)は東証の適時開示ルールにしたがって、イベント発生後速やかにその旨や影響等をディスクローズする必要がある。

www.jpx.co.jp
半期ごとにまとまった業績報告をしてその間の重要イベントは発生ベースで対応
これで十分ではないか、という疑問を導入当初に感じた。


コストの問題もある。追加コスト無しであればまだしも、会社からすれば決算報告が年2回だったのが、年4回に倍増する。事務コストの増加は必至だ。また、監査法人のレビュー業務も必要だ。半期報告書に含まれる半期決算書までは監査証明が必要だったが、四半期決算書に対してはスピ―ド重視でレビュー報告書と言う監査よりも若干手続きを省いた手続きとなる。とはいえ、最低限必要な作業はあるので、やはり回数が増えれば監査コストは増える(実際、これを理由に年間の監査報酬を増額してもらってたし)。

四半期報告書に含まれる情報は、会社からのコスト負担の要請を受けて導入当初から3年後に簡素化された。具体的には、一定の注記を条件に、第1四半期と第3四半期の(連結)キャッシュ・フロー計算書の作成等の省略が可能になった。

そんな四半期報告制度だが、ここに来て疑問視する声が上がっているらしい。

記事には、
短期で成果を出すよう経営者や投資家に心理的な圧力
を掛けるというものだ。』

この点は、アメリカの著名な投資家であるバフェット氏も指摘してる☟ 


www.nikkei.com


少し引用。
『企業が四半期決算に縛られると、数字合わせという操作に走り、企業の長期的重要関心事に反する愚かなことをするものだ。この操作は一旦始めるとやめられなくなる傾向がある。最高経営責任者(CEO)がxxドルなどと四半期利益予測を出し、その企業の業績が改善された例など見たこともない。結果的に、企業は誤った情報を発信していることになる。私はマネジャーたちに、50年続く同族企業に居るつもりでやれば、正しい決定ができるものだと説いている。私は20ほどの企業の顧問をしているが、目標達成が困難になると数字を操作するという悪癖に陥りがちだ。しかも一度始めたらやめられなくなる。IR部門が風評被害を恐れ口を挟み、愚かなことをしがちなのだ』

短期間の業績開示が、経営者に対する短期成果主義へのプレッシャーとなり、長期的な視点に立った経営がおろそかになる、それどころか粉飾決算を助長する、というものだ。
バフェット氏に限らずこういった批判は少なくない。
(バフェット氏に限っては、情報開示のあるべき論というよりは自社の都合と言う面もあるようだが・・・)

日経記事では、『英国では07年に導入された四半期開示の義務が14年に撤廃された』
とのこと。

しかしながら、同時に、次のようにも言っている。

『最近発表された学術論文は、わずか7年で制度が大きく変化した英国を取り上げた。開示義務の導入と撤廃が企業や市場に与えた影響について、その論文は分析。上場企業の設備投資や研究開発費を見る限り、義務化で経営が短期志向になるとか、撤廃で長期志向になったとの変化は見いだせないと結論づけた。』

会社視点、投資家視点では意見の相違もあろう。会社側の視点に立ってきた感想としては、IRへの度重なるコスト増加や投資家からの短期での成果要求などはかえって

会社を弱体化させるのではという思いも理解できる。しかし、
投資家あっての会社だし、会社あっての投資家、
どちらかの主張では無くお互いの合意、あるいは
合意に至るコミュニケーション
こそが重要ではないかと思う。

コストを費やして四半期情報を作成しても投資家に有用な情報とはなり得ない、というのは、会社が決める話ではなく、投資家が決めることだ。投資家にとって有用な投資情報であるならば会社はそれに応える責任がある。もちろん、一部の投資家の要求が偏っているとか不合理な場合もあるだろう。その場合は、行き過ぎた情報開示のコストは会社のフリーキャッシュフローを引き下げ、企業価値を低下させるため、投資家へブーメランで返ってくることになる。

 

また、投資家が短期志向になっているからと言って、会社の経営視点が短期化する必要もない。それを言い訳にするのは筋違いだ。会社と投資家の見解に違いがあれば、ギャップを解消すべくコミュニケーションを取るなりの努力をすれば良いだけのことだ。イギリスの例でも紹介されているが、四半期情報の開示が無くなったからと言って会社の事業戦略が長期化した訳でもないらしい。自分たちができないことを他責にするのはどうかと思う。

当時は成り行きとして導入された四半期情報開示だが、改めてその是非を検討することは、企業と投資家がお互いの存在意義やそれを踏まえて資本市場の一層の成熟には必要なプロセスではないかと思う。

 

と、こんな情報が・・・

 

 

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 この方もバイアスがかかってそうな気もするが、近々動きがあるかも・・・