FBにも簡単に上げたけど、事務所ブログにも上げておく。
週刊新潮に掲載されたオフィス北野問題(?)に関する記事。
たけし軍団の声明に対する森社長の反論を読んでの感想。
疑問1~4について、それぞれ森社長の反論が書かれているが、個人的に気になったのは疑問4
『疑問・4 「昨年9月の決算で、オフィス北野は500万円ほどの赤字を計上してしまった。会社の売り上げは24億円程度ありますから、経営を根本から揺るがす赤字ではありませんし、そもそも「アウトレイジ最終章」(昨年10月公開)の製作費は既に出ていっていたの対し、映画に関する売上げが入ってくるのは半年ほど後になるというタイムラグが生じます」という部分。出版界でも原稿料の支払いは「20日締め、翌々月末払い」というのが浸透しており、タイムラグが生じるのは仕方にないとは言え、これは説明すれば納得できるものではないでしょうか。が、「たけしさんは自分が休みなく働いているのに」と怒りが収まらず、納得しません。これなども「愛人が裏で糸を引いているのでは」と邪推させる文章です(あくまで邪推です)。』
どのくらいの人がこの説明に納得するのだろうか?
もちろん、それは単純に言い訳しているとか、何となく怪しい、ということで納得しないのではなくて、森社長の主張は会計的には反論になっていないと思われる。
森社長の説明は、おカネの出入りについてであり、たけし軍団の指摘は(オフィス北野が)赤字だという点だ。
会計的に言うと、たけし軍団は損益計算書(P/L)の赤字を指摘しているのに対して、森社長はキャッシュ・フロー計算書の資金収支の説明(反論)をしていると思われる。
オフィス北野の決算書の詳細は知りえないが、非上場会社とは言え、20数億円の売上の会社が現金主義で決算書を作成しているとは考えにくい(法人税法上もあり得ないだろう)。
映画ビジネスの会計処理については、以下を参照して欲しい。
☟
映画製作費は、企画段階、プリプロダクション段階、プロダクション段階のいつから資産計上するかの論点はあるが、各段階の各アクションに係ったおカネの支払いと同時にP/Lの費用とされるわけでは無く、資産計上される。
資産と言っても、棚卸資産、有形無形固定資産、あるいは投資有価証券等と形態は異なる場合があるが、ややこしくなるのでここでは簡略化して、映画製作のために支払ったおカネが即費用となるのではなく、資産とされるという点に留める。
では、その資産はいつ費用となるのかというと、映画という映像作品から得られる収益に対応させて費用化する(費用収益対応の原則)。
具体的な費用化の方法としては、映像作品の将来の予測収益に対応させて償却(漸次費用化)する方法もあれば、一定期間(例:2年)で償却という方法もある。
対するに収益はどうか。
映画興行会社、配給会社の例が書かれているが、細かい点はわきに置いて、例えば『興行収入は、当日券、前売券、優待券などのチケットが劇場に着券した時点で認識される仕組みになっており、それぞれのチケット単価に入場人数を乗じた金額で計算されます。』
要するに、実際に映画興行会社等におカネが回収された時点で売上が上がるわけではない。配給会社における配給収入も同様だ。
オフィス北野が映画ビジネスの中で具体的にどのドメイン(制作会社、映画興行会社、配給会社)に属しているかの詳細は知らないが、いずれであったとしても、P/Lの売上、費用の認識タイミングとそのためのおカネの出入りは必ずしも一致しない、ことが理解できると思う。
ザックリ言うと、森社長が主張される”タイムラグ”はおカネの出入りについてであり、損益ではできるだけ売上と費用のタイムラグを無いようにしているのである。
簡単な例を示すと・・・
映画製作費 増額100は当期に支払
映画興行収入 総額200は当期に放映(売上)するが、来期に回収
とすると、
当期 来期
利益 100 無し
おカネ △100 200
となる。
たけし軍団が指摘してるのは、上段である当期の利益(設例では100)が赤字なのはおかしいということであり、森社長が反論しているのは、下段の当期のおカネが赤字(設例では△100)だけど来期に200が回収されるから問題ない、ということで指摘に対する反論になっていないということだ。
会計に明るい人であれば一見してオカシイと気づく点であるが、一般的にはおカネの出入りと損益とを混同してしまうことは少なくないようだ。
とはいえ、世間から注目されるオフィス北野の内乱。
たけし軍団の声明に対しる森社長の満を持しての反論(5時間も!!)。
専門家のサポートも得て、当然に準備に準備を重ねたことだろう。
大体それだったら5百万円ぽっちの赤字で済むわけないだろうと思うのだが・・・
それがこれか、と思うと、
一事が万事そういう感じなのかなあ、
と思えてしまうのだった・・・