溝口公認会計士事務所ブログ

京都市在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。日頃の業務の中で気になったことを書いています。

戦略会計って何!?

気が付けば8月も終わり、もう9月。

思えばブログ更新に1月空いたのはこれまでなかったな・・・

それだけ、忙しくなってきたということか、な、

まあ、色々と・・・

前向きにとられたい汗

 

久しぶりとなった今回の投稿は、

戦略会計

について。

 

皆さんは、戦略会計という言葉を聞いたことがあるだろうか?

筆者はというと、

耳にしたことはもちろんある。

が、まあそういうことだろう、とう自分なりの解釈で理解していた。

先日、戦略会計について質問されたので、

ちょっとググってみた。

 

それらしき定義は見当たらない。

 

インターネット上では、多くの専門家やコンサルティングファームが、

それぞれの見解を示している。戦略経理という言い方もあるみたい。

 

戦略会計とは、

・・・・だ!

 

という具合。

セールストークみたいになってる・・・

  

会計でありながら、

戦略って強い響きだし、

会計処理よりも前向きな印象だ。

そして、何か新しい感じがする

という点もウケが良いのかもしれない(笑)

 

ザっといくつか目を通すと、

経営戦略立案に会計を活用する

経営判断に役立つ会計情報と提供する

原価企画に役立てる

投資判断に資する数値情報を示す

等々

といった具合。

 

一般に、会計というと、

企業の活動の結果を

帳簿に記録する

決算書を作成する(報告する)

と理解されている(ことが多いと思う)。

会社自身が活用するというよりは、外部の銀行や税務署、上場会社であれば株主、投資家の意思決定のための情報を報告する目的だ。

 

これに対して、戦略会計は、結果の記録、報告ではなく、

戦略立案、進捗管理、課題(差異)分析、(改善や投資)意思決定

といった会社の活動を決定するため、つまり

”前向き”に会計情報を使っていこうという趣旨なのだろう。

 

会計を戦略的に活用することで、会社の

売上高の成長

収益性の改善

効率性の向上

といった効果が期待できる、といったことだろうか。

 

なんだか、コーポレートガバナンス・コードの謳い文句の

 

”攻めのガバナンス”

 

みたいだ・・・

 

筆者の理解が正しければ、

 

要するに、

 

戦略会計≒管理会計

 

PDCA

をうまく回していくための会計情報ということだ。

 

管理会計というと、その響きから”後ろ向き”な印象が否めない。

管理って言葉が印象悪いんだろうな、たぶん・・・

 

印象って大切!!

 

と、印象はともかく内容としては、

 

経営意思決定のための会計情報

 

という意味なのだろう。

 

ちなみに、公認会計士の受験科目においては、これらの多くは

原価計算に含まれていたような気がする。

一例をあげると、

・予算策定

・原価企画、原価計算

・予算実績差異分析

・外注/内製の判断

・経済的発注量の決定

・節税効果(タックスシールド)

・埋没原価(サンクコスト)

・NPVとIRR

などなど、戦略会計に含まれそうなコンセプトは

全て原価計算という科目の範疇だ。

30年近く前になるが、当時、会計士試験(2次試験)の試験科目は7科目あったが、

中でも原価計算が一番好きだったなあ(遠い目)・・・

 

誤解があればご容赦願いたい。

また、上記以外に戦略会計の意義、目的があれば、

是非情報をいただれば幸いである。

 

ということで、ここからは改めて筆者の理解に沿って

話を進める。

 

戦略会計は特別新しいコンセプトではなく、

むしろ、オーソドックスなコンセプトと考える。 

 

では、何故今、戦略会計なのか

(ような気がするのか)

とについて、少し考えてみた。

 

社内における会計情報の提供者、つまり経理部門等のスキルはそれほど変わっているとは思えないから、考えられるのは、社内の会計情報の利用者、つまり経営者に求められる能力や意識の変化ではないだろうか?

戦略やオペレーションなどの経営意思決定における会計情報の役割が高まっているのではなかろうか。

そして、その背景には、経営環境の変化があるように感じる。

消費者の二―ズの変化、製品ライフサイクルの短期化、テクノロジーの変化などの事業環境の変化により、経営者にとってはより将来の事業見通しが難しくなっている。

いわゆるVUCA時代だ。

同時に、株主等からの経営の透明化の要請など、企業ガバナンスを高める要求も近年高まっている。

このような経営環境の変化が、従来の勘と経験による経営判断を許容しにくくしている要因に思える。

そして、経営意思決定の精度、そして透明性を高めるために、経営における会計情報の重要性が増しているのではないだろうかと思う。

また、経営者の質もこの10年で結構変わってきているように思う。

データ重視というか、論理的に物事を考えるタイプの経営者が増えてきているように感じる。その分、豪快さは減ってきているようにも思うが・・・

 

だとすれば、それは歓迎すべきことだと思う。

というか、

本来あるべき状況に近づいていると思う。

 

もともと会計とはそういうものだ。

 

しかし、残念ながら、いかんせん

 

経営者が会計を理解していない

(から勘と経験による経営になる)

経理部門の社内での立場が弱い

など

本来の役割を果たせてこなかっただけのことだ。

 

以前、担当していた会社の経営者(会長)の言葉を思い出す。

 

『あいつらは、後になってからしか言ってこない。

もっと早く言ってこんか!』

 

あいつらというのは経理部門のことだ。

後というのは、月次や決算期など期間後ということで、要は、

決算期が終了して数字が確定してから、原因がこうだったとしか言ってこない

という嘆きというかボヤキだ。

それはそれで重要な機能だとは思うが、会長が言いたいのは、

このまま推移すると、数字がこうなる、そうならないための改善策を提案しろということだ。例えば、生産能力の増強についての提案を営業部門や製造部門等と事前に議論して、経営に持ってくるのが経営管理ちゃうんかい!

という期待を込めた叱咤激励だ(と思いたい)。

ちなみに、会長は、経理は『経営管理』の略で、数字をまとめるだけの役割ちゃうやろ!とよく言っていた。

もっとも、経理部門も折に触れ(会長に)進言していたとは思うのだが、内容やタイミングがお気に召さなかったのではないかと思うのだが・・・

大阪の経営者ということもあって、少々口は悪いが、非常に有能な経営者で、部外者の僕も経営についていろいろと勉強させてもらった恩人である。

 

いずれにせよ、コロナ禍も然りでVUCA時代、先を見通しにくい経営環境においては、経営意思決定における会計情報の重要性は高まっていくと考える。

 

戦略会計、戦略経理、名称はともかく、

経営における”前向き”な会計情報の活用を期待したい。

 

ところで・・・

 

会計戦略

となるとまたちょっと違うニュアンスになるので、こちらは

また、別の機会ということで!