『事業活動の継続にリスクが高まった場合、決算資料で開示が必要な「継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に関する注記」を付ける上場企業が減っている。2015年度は前年度比3社減って44社となり、リーマン・ショックで急増した08年度以降で最低。日銀のマイナス金利政策導入などで資金調達の環境が好転したのが一因だ。』
近い将来の会社の倒産リスク情報であるGC注記が付く会社数が今年度は減少とのことだ。
『GC注記』の何たるかはこちら☟を参照していただくとして、話を進める。
決算書に『会社が潰れるかもしれない』情報が付いているって本当? - 溝口公認会計士事務所ブログ
GC注記は、会社が財務諸表の注記情報として記載するので、一義的には会社が会計ルールに則ってGC注記を付けるかどうかを判定する。しかし、会計監査(監査法人等による会計監査が必要な会社)では注記情報の妥当性も監査されるため、実質的には会計監査でGC注記が必要かどうか判断されることになる。
ルールとはいえ、会社自身が近い将来倒産しますなんて普通は言いたくないしね・・・
GC注記が付いた会社のその後はというと・・・
上場廃止、経営破たんとなる会社も少なくない。
それだけ、ギリギリの段階になってGC注記が付されるというのが会社(経営者)と監査法人のセメギ合いの結果ではないだろうか・・
裏返すと、結構やばい会社でもGC注記が付されていない、
いわば潜在的GC注記会社も相当数あるのではないかと思われる。
実際、2015年4月に民事再生を申請した江守グループHDも、
過去5年間ズーッっと営業キャッシュ・フローは赤字だったのにP/Lが赤字に転落したのは民事再生申請3か月前の2015年3月期第3四半期(2014年12月末)だ。
過去ブログでは典型的な『黒字倒産』の事例として紹介しているが、同タイミングで初めてGC注記が付されている。
が付くってどうなんだろうか?と首を傾げたくもなる。
余談だが、このような典型的な黒字倒産の予兆を長期に亘って見逃してきた監査法人の責任が東芝の例と違って一切指摘されないが、これは一体どういうことだろう?
これはちょっと極端な例としても、結構ギリギリの状況になって初めてGC注記というケースもあることが分かってもらえるのではないだろうか?
(黒字倒産の典型的なパターン 【江守グループHDの例】 - 溝口公認会計士事務所ブログ)
で、だ。
その逆が当期起こっているのではなかろうか?
記事にもあるが、GC注記会社数が減少しているのは
『資金調達環境が好転』しているのが一因とのことだ。
赤字でもおカネさえあればすぐには会社は潰れない、
ということだ。
GC注記の判定の際の近い将来会社の事業継続が危ぶまれる、の
近い将来=決算日から1年以内に倒産するかどうか、
実務上の1つの目安となる。
要するに、余命1年が見込まれればGC注記を外すことも可能なのだ。
GC注記が外れたらもう安心、ということにはならないのである。
つまり、
GC注記外れる=超危険水域からとりあえず脱した
程度と考えた方が良さそうだ。
と、言うのも、そもそもGC注記が付くような会社は、一時的な原因で事業継続が危ういのではなく、
本業が不調であることが根本的な原因
であることがほとんどだ。
(2016年3月期決算 上場企業「継続企業の前提に関する注記」調査 : 東京商工リサーチ)
つまり、一時的な資金注入で当面は息を吹き返すかもしれないが、本業が回復しない限り近い将来またおカネの底が付くことは想像するに難くない。
本業が回復しない限り、仮にGC注記が一時的な要因で外れたといっても安心は早計と言えるだろう。
このように、GC注記は投資家、株主、取引先などの関係者にとって会社との取引を考える上でも重要な情報だ。
では、GC注記は決算書のどこに記載されているかと言うと・・・
B/S、P/L等の財務諸表のすぐ後、注記情報のトップ
に(継続企業の前提に関する注記)と銘打って記載される。それだけ重要な情報ということだ(全部読んだ挙句に、ところで当社は近く行き詰まるリスクがありますとされると、ズッコケるし・・・)。
個人的には、財務諸表の前に持って来て欲しいくらいだが・・・
では、そんなこんなでGC注記が外れてもなお、相当の事業継続リスクがある場合は、というと・・・
有価証券報告書では、
「事業等のリスク」及び
「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」
にリスクの内容が具体的に記載される場合もあるので、こちらにも記載がないかどうかチェックしてみて欲しい。