溝口公認会計士事務所ブログ

京都市在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。日頃の業務の中で気になったことを書いています。

IPO難民は、監査法人の責任か!? 【ボヤキ&業界暴露系記事】

www.nikkei.com

あずさ監査法人が監査業務の新規受注を1年間停止すると表明して半年あまり。大手が不正会計などリスクが大きい割に実入りの少ない新規株式公開(IPO)企業の監査を敬遠する動きが広がっている。監査契約を結べない「IPO難民」が増えれば、東京市場の活力低下にもつながりかねない。』

 

散々待たされた挙句に大手監査法人から契約を断られる上場準備会社が相次いでいるという。

東芝などの不祥事受け、監査法人(特に大手)がIPOに対して尻込みしているらしい。

東芝のような一部上場会社にすらリスクを感じるのであれば、IPOを目指す新興企業ならばなおさら、と言うことだ。

ここで言うリスクとは

『監査リスク』だ。

 

監査リスクは、財務指標の重要な虚偽表示看過して誤った監査意見を述べる可能性のことだ。

監査リスクの要因には、不正と誤謬(*)の2つがある。会計監査人(以下、監査法人で通す)が、不正や誤謬を見逃して財務諸表が正しいと判断してしまうリスクだが、IPOを目指す会社や上場後間もない会社は一般的に監査リスクが高い。

(*)誤謬=ミス

 

監査リスクを見誤った結果として起こる

監査の失敗はもちろん監査法人の責任だが、敢えて言うとそもそもの原因は会社にある。つまり、会社が正しい財務諸表を作成していないことがそもそもの原因だ。これは言い訳でも何でもない。

会計監査の大前提に、二重責任の原則、がある。

正しい財務諸表を作成するのは経営者の責任

財務諸表に監査意見を表明するのは監査法人の責任

と役割と責任が異なる。

したがって、経営者は、正しい財務諸表を作成するために従業員、システムなどのリソースの確保、教育研修、内部統制の整備、運用する責任がある。

ところが、一般に上場準備会社人的、資金的リソースが十分でなく、営業、技術等にリソースが優先される傾向があるため、このような体制整備が後回しにされがちだ。

 

具体的な社名は伏せるが、新規上場後まもなく業績予想を下方修正(それも黒字から赤字)したり、架空売り上げ等の粉飾決算で問題となった会社も少なくない。また、記事にもあるような顧客情報流出やコンプライアンス違反などの不祥事もよく聞く話だ。さらに、経営者が刑事事件で逮捕されるといった会社もあるからあきれるばかりだ。 

 

こういう状況が続くと、監査法人が尻込み

をするのも頷ける気がする。

 

もっとも、どんな会社でもフリーパスで上場できるわけではない。

このような不祥事を起こさないような経営者の倫理感や組織の体制整備については、上場準備の過程で厳しく審査される。

 

ところが・・・

上場審査の実態については、以前、こちら(☟)に記載したので確認してほしいが、上場会社の増加という目的が先行して、審査が甘くなっているのではないかとの指摘もある。

 

tesmmi.hatenablog.com

 

上場準備の過程では、

証券会社、証券取引所ベンチャーキャピタル(VC)、監査法人などがそれぞれの立場から、会社を指導して上場会社として期待される管理体制整備を進める。

 

証券会社、証券取引所、VCなどは、会社を上場させることで成功報酬やキャピタルゲインが得られる、あるいは上場後の手数料が得られる等のインセンティブがある。

これが、上場審査が甘くなる原因の1つとされる。

 

監査法人も上場後も継続的に監査報酬を得られるという点では同じなのだが、成功報酬のような上場をゴールとしたインセンティブはない。

 

また、上場後も同じ立場で継続して関与するのは監査法人だけだ。

 

監査法人は、上場準備段階において監査法人は会社が正しい財務諸表を作成できるよう経理部門の体制整備や従業員のスキルアップなどの指導もする。上場会社となれば1年生だろうが一律の扱いを受ける。1年目だから財務諸表に間違いがあっても大目に見てもらえることはない。二重責任なのだから間違っていたら不適正意見を出せば良いかというと実際にはそう簡単な話でもない。

不適正意見の表明は上場廃止につながる(*)・・・

(*)☟参照

 

tesmmi.hatenablog.com

 

また、だったら何でもっと厳しく指導してくれなかったのか、と

会社から反撃されるのがオチだ。

 

『 あずさの鈴木智博IPOサポート室長は「新興企業の成長性を見極めるのと監査法人としての収益を両立させるのは難しい」と説明する。現在は新規受注のガイドラインを策定中で「監査作業の工程を見直し法人全体の作業量を3割減らしたい」(酒井弘行理事長)とする。』

 

上場準備段階は会社のビジネスの規模や資金的な問題から監査報酬の水準は低い。一方で、会計監査に加え内部統制の整備、運用の指導(*)などのコストはかかるため

監査法人の採算は大抵は赤字である。

(*)会計監査とは別契約だが、それでも通常、コスト>報酬である・・・

 

IPOというと聞こえは良いが、IPO部門は監査法人内では決して力がある訳ではない。それもそのはず、売上規模も小さく赤字部門・・・

監査法人の事業戦略上、重視すべきとの見方もあるが、残念ながら会計士はそれほど長期的視野に立ってモノを考えない・・・

 

もう一つ言うと、上場後に監査報酬が大幅アップすることも少ない

監査報酬は工数がベースだったり、上場はしたものの会社にそれほどの資金余力がなかったり、監査法人の交渉力の弱さだったり・・・

 

それでも、リカーリングジョブとして継続した安定収入が期待でき、上場後にこれまでの赤字を回収できるからこそ、上場準備会社(IPOクライアント)と契約する意味がある。

それが、手塩にかけたクライアントに上場後すぐに問題起こされ、さらに監査法人の責任を追及される。

 

投資を回収できない、更にはレピュテーションも毀損

するでは、とてもやってられない、というのが本音だろう。

 

『「ぜひそちらに依頼したい」。ある中堅法人のもとには大手に断られた新興企業からの案件が次々に舞い込む。監査法人と契約できず、上場したくてもできないIPO難民の“駆け込み寺”になっているのは準大手・中堅の監査法人だ。「営業していないのに上場予備軍が大量に流れ込んでくる」(中堅法人のパートナー)』

 

で、大手が敬遠すると、

中堅監査法人白羽の矢が立つ。

中堅としては、ここがビジネスチャンス!かも知れないが、

 

でも、上場したら

 

すぐに大手に鞍替えするんだよね・・・

 

そんな状況が続けば、中堅監査法人も引き受けられなくなるし、

IPO難民も増える・・・


 
『堅調な相場環境に支えられ、18年の国内IPO数は「90~100社程度」(野村証券)と、金融危機前の07年(121社)に次ぐ高水準になる見通しだ。だがIPOは3年程度の準備期間が必要で、IPO難民が顕在化するのはこれから。全体のIPO数が大きく減少する可能性もある。資本市場に厚みを持たせるためには活発なIPOが不可欠。

「IPOのボトルネック監査法人(大手証券幹部)という現状を解消する知恵が必要となる。』

 

勝手なことを言ってくれる。これは、監査法人だけの問題でなく

IPOを取り巻く環境全体の意識と体制の問題

だと思う。

IPOボトルネック監査法人といっているうちは、IPO難民問題の解決は難しいだろう。

企業が開示する『2つの利益』って何だ!? 【少しボヤキ系記事】

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180515&ng=DGKKZO30459070U8A510C1EN1000

 

『決算発表で企業が「2つの利益」を開示する例が増えてきた。会計基準に基づく利益に加えて、同基準に基づかない独自の社内利益指標を開示し、利益の傾向をわかりやすくする狙いがある。一方、米国では経営者が都合の良い数字を選ぶことに批判が根強い。どちらの利益を重視すべきなのか、開示情報から企業価値を探る投資家を悩ませている。』

2つの利益を開示する企業が増えつつあるとのこと。

といっても、2つの利益って何のこと?

という疑問もあろう。

 

記事にもあるように、2つの利益とは、

 

会計基準に基づく利益

・会社独自の管理指標としての利益

 

のことだ。

 

例えば、ルネサスエレクトロニクスであれば、日本の会計基準に基づく営業利益と買収で発生したのれんの償却をしない場合の営業利益の2つを開示しているということだ。

 

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営業利益を2つも開示してよいのか?という疑問もあるかもしれないが、会社の業績を説明する上で、会社が業績を含めた会社の実態を説明する上でより有用だと判断するのであれば一向に構わない。

誤解してほしくないのだが、会社法決算や金商法に従った決算といった法定の決算上の利益はあくまでもルールに従う必要がある。あくまでも、その上で会社の業績等の説明上に2つめの利益を開示する、ということだ。

 

記事には、昨年からの決算短信の様式の自由化が2つの利益開示を後押しとあるが、それもなくはないだろうが、それよりも会社として

業績をより良く見せた

という意向の表れだと思う。

 

ルネサスGCAもそうだが、のれんは日本の会計基準では20年以内の一定期間で償却する。例えば、企業買収によってのれんが100億発生したとして、これを20年で償却すると5億/年の償却費(営業費用)が発生することになる。ということは、買収によって少なくとも5億超の追加利益が見込めないと、差し引きで営業利益は買収前より悪化することになる。そもそもそんな買収すること自体を問題視すべきであるが、そこで、仮にIFRSのようにのれんを償却しないとすれば営業利益はこれだけ大きくなりますよ(例だと5億/年)というアピールだ。

 

 これに対して市場はどう受け止めているかというと、

14日の東京株式市場ではルネサスエレクトロニクスと、M&A(合併・買収)助言のGCAの株価がともに一時、前週末比7%の大幅安となった。』

 

会社のアピール空しく、

会計ルールに基づく利益に軍配

が上がったようだ。

 

記事にも、GCAを例にとって

『純利益は前年同期と比べ2.7倍と開示。ただこれものれんの償却などを除く社内指標で、会計上の最終損益は赤字だった。両社とも株価は下落し、資家は今のところ会計上の損益を重視しているようだ。』

 

とあるが、果たして会計上の利益を重視しているのかどうかというと少し怪しい気もする。

例えば、のれんも償却も日本基準では償却ありだが、米国やIFRSでは償却はしない。つまり、計上の損益といってもどの国の会計基準によるかで利益は変化する。

 

果たしてどこまで分析して「本業の利益」と評価しているのだろうか?

 

案外、2つの利益の内、いずれか小さいほうを保守的な観点から重視するとしているのではないだろうか・・・

 

f:id:tesmmi:20180516183717p:plain

 

私見であるが、例えば、

のれんの償却にしても、投資行為として行ったM&Aによるのれんは非償却、事業シナジーを期待するM&Aによるのれんは償却といったように、のれんを発生要因別に区分するとか、固定資産の減損損失も多店舗事業における事業の一環として発生する減損損失は営業費用に含めるといった、実態の応じた分析、評価を期待したい。

 

とはいえ、個人的には、会社にとっても投資家にとっても、会社が会計ルールにとらわれない独自の業績指標を開示すること自体には賛成だ。

 

過去ブログは☟

 

tesmmi.hatenablog.com

 

 

tesmmi.hatenablog.com

 

企業間の比較可能性を担保するためにも、やはり一定のルール設定は必要だ。とはいえ、ルールである以上、どこかで線引きをせざるを得ず、百社百様に当てはまるかというとそうとも言えない。場合によっては、会計ルールよりも会社独自の業績指標の方が会社の実態をより的確に表す場合があるかもしれない。

 

投資家にとっても、会計ルールに従って計算された利益を鵜呑みにするのではなく、会社の本来の実力値を主体的に検討評価するという意識を持つためにも効果的のように思う。

 

いずれにしても、今後益々、会社の開示する数値を見抜く眼力が求めれることは間違いなさそうだ。

ポイントの活用を会計が後押し!? 

www.nikkei.com

 

興味深い記事だ。

 

『クレジットカードで支払ったり、電子商取引(EC)サイトで買い物をするとたまるポイント。このポイント投資信託や株式などに投資できるサービスが相次いで登場している。クレディセゾン楽天証券などが参入し、プレーヤーは1年強で6社に増えた。相次いでポイント投資に乗り出す企業の狙いは何か。』

 

その背景に、ポイントの会計処理があるという。

今や消費者にとっては当たり前となったポイント。商品が同じならポイント還元率の高いお店(ECサイト)で購入するという消費者も少なくないだろう。裏返せば、企業にとっても他社との差別化要因ともなる。

 

クレディセゾン、ドコモ、JALANA、JR各社、ビックカメラヤマダ電機等々

挙げればきりがないほど。

そして、ついに2020年には代表的な企業のポイント発行額が年1兆円規模に到達とする見込みとのこと。

 

 

【ポイントの会計処理】 

ポイントについて、日本の多くの企業は以下のような会計処理をしている。現時点ではポイントについての詳細はルール設定はされていないので、会計慣行に基づいた一般的な引当金としての会計処理だ。

 

【前提】
ある会社が、顧客の売上1,000円当たり1ポイントを付与します。顧客は、1ポイント当たり10円で会社の商品とポイントを交換できるとします。決算期末に付与されたポイント未使用残高は10,000ポイントで、将来におけるポイントの使用見込率は過去の実績等から50%と見込まれるとします。なお、ポイントの使用期限はありません。

 

【ポイント付与時=当初商品販売時】
会計処理は不要

 

【決算期末(1年目)】
借)ポイント引当金繰入額(販管費) 50,000円 貸)ポイント引当金(負債) 50,000円
50,000円=ポイント残高10,000×@10円×50%

次年度になり、10,000ポイントの内、2,000ポイント分が使用されたとします。

 

【ポイント使用時】
借)販売促進費販管費) 20,000円 貸)売上 20,000円
20,000円=2,000ポイント×@10円

 

【決算期末(2年目)】
借)ポイント引当金 20,000円 貸)販売促進費販管費) 20,000円

 

もう少し詳しくはこちらを参照☟

globis.jp

 

設例では、ポイントの本質を販売促進費と捉えている。ポイントの発行がなければその分売上は減ったであろうから、ポイントはその年の売上高に対する販促費に相当するということだ。そして、毎年のポイント発行額の内、将来使用されると見込まれる部分に相当する金額がその年の販促費という考え方だ。会社によっては、販促費ではなく『値引き』として処理する場合もあろうが、売上規模が減るのは好まれないので、販促費として処理するケースが多いと思う。

なお、平成33年度から適用開始予定の新しい会計ルールでは、ポイント(カスタマーロイヤリティプログラムと言うが)を売上とは別個の取引(商品券の販売のような)として認識する。

 

ポイントの新しい会計ルールの詳細はこちら☟ 主に48,50,140,186項

https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/20180330_02.pdf

 

記事に戻って・・・

 

【ポイント増加との関係】

 『ポイント発行企業にとって、顧客がポイントを使うことは短期的には利益圧迫要因になる。ところが、実は使われないまま積み上がった「眠れるポイント」をいかに減らすかは、発行会社にとって大きな課題だ。』

 

ポイント引当金は過去の実績などを考慮して引当金を積んでいくのが一般的(設例では50%)だ。使用実績が減れば引当率は低下してポイント引当金は減少するが、毎年新しくポイントは発行されると結果としてポイント引当金の金額は年々増加することになる。それでもポイントに有効期限があれば期限切れのポイント部分に対するポイント引当金は減少するが、クレディセゾンのようにポイントに有効期限がないとポイントが使われない限り引当金を積み続けるしかない。クレディセゾンのB/Sに負債として積み上がったポイント引当金17年末に1000億円を超えたという。

 

ちなみに、ポイントに有効期限がある場合、期限切れとなったポイント引当金はどうなるかを上の設例を使って説明する。

ポイントの残高3,000ポイント(30,000円相当)が期限切れとなった場合は以下。

 

【ポイント期限切れの会計処理】

借)ポイント引当金 30,000円 貸)販売促進費販管費) 30,000円

 

要するに、 

思ったほどポイント使われなかったね

ということ。換言すれば、

販促費は実はそれほど必要ではなかった

(なので、過去の販促費の戻し処理)

ということだ。

なお、あまりにも金額が大きくなると、過去のポイント引当に対する見積もりが誤っていたとなり、過年度に遡って決算を修正する必要がある。

 

色々脱線して申し訳ないが、

で、何でポイントがB/Sに積みあがると問題なのかについて記事はこのように指摘している。

 

『大手監査法人は「売り上げに結びつかない“塩漬けポイント”が負債に積み上がるのは財務諸表上、非効率と指摘する。』

 

 

非効率というのは、おそらくはポイント引当金分、

B/Sが膨らむ、かつ、滞留している

つまり、

⇒資産の有効活用がされていない

ROE、ROICなどの財務数値の悪化

 

を指しているのではないだろうか。

 

これに対して、各社何とかポイント引当金を減らす手段はないかということで、ポイント投資に乗り出した、ということだろう。

 

株式等への個人投資が進むことの良し悪しはわきに置いて、楽天などはEC事業と証券事業の相乗効果も期待できるとのこと。

 

ここで冒頭の「興味深い記事だ」につながる。

会計処理が実業を動かすに切っ掛けになったとは、会計の世界に身を置くものとしては気分は悪くない話だ(笑)

 

ところで、

『大手監査法人は「売り上げに結びつかない“塩漬けポイント”が負債に積み上がるのは財務諸表上、非効率」と指摘する。』

 

改めて見直すと、これって本当だろうか?

もちろん、記事の指摘が、

資産の不効率⇒ROE、ROIC等の財務数値の悪化

ということであればだけど・・・

 

というのも、ポイント引当金に限らず引当金を設定(計上)すると、利益が減る。

利益が減ると、B/Sでは純資産(利益剰余金)が減る。

先ほどのポイント期限切れの場合の会計処理からも明らかだろう。

 

つまり、税金(税効果含む)を無視すれば

 

引当金(負債)が増えた分純資産は減る関係

にある。

 

ということは、利益が変わらなければ、

 

総資産額は不変 ⇒ ROA、ROICは不変

 

また、ポイント引当金’(負債)が増えた分、純資産が減るのだから、

 

財務レバレッジは高まる ⇒ROEは改善

 

するように思うのだけど・・・

不適切な会計処理の現況 【定点観測】

www.nikkei.com

東京商工リサーチ20日、2017年度に粉飾や横領など不適切な会計処理を開示した上場企業が64社だったと発表した。前年度(42社)から22社増え、08年の調査以来で最多となった。』

 

東京商工リサーチから2017年の上場会社を対象とした『不適切な会計・経理の開示企業』調査結果が発表されたので定点観測として書き留めておく。

 

2008年度の調査開始以来、10年間で社数、件数ともに最多を記録とのこと。

 

不適切会計開示企業推移

 

原因の1,2は以下。

経理や会計処理ミス 29社(53.1%)

粉飾 22社(34.4%)

不適切会計開示企業 内容別

不適切会計と言うと、架空売り上げ、費用の先送りなどの粉飾決算が思い浮かぶが、意外に思うかもしれないが、最多は『会計処理ミス』だ。

経営者の中には、

経理なんてのはコンピュータが自動的に計算、処理するんだろ。何でそんなのに多くのリソース(人員とおカネ)を割かないといけないんだ?

と思う人もいるかもしれない。

しかし、最近は特に会計ルールの複雑・高度化は目覚ましく、これらに適切に対応するにはそれなりのコンピュータシステム、人材の採用・育成などをもって対応する必要がある。グローバルに事業展開している会社となれば、その対象は国内本社のみでなく国内外のグループ会社にも及ぶ。

必要な対応を怠った結果として、会計処理のミスや誤りに繋がる傾向が調査結果から読み取れる。

 

また、市場別にみると、東証1部企業が34社(53.1%)と最多。

東証1部企業は他の市場と比べるとビジネスの規模が大きく展開が幅広い会社が多い。ということは、傘下に多くのグループを持つケースも多くみられる。

発生当事者別にみると、『子会社・関係会社』で発生した不適切会計が30社(46.8%)とトップ。子会社・関係会社での発生件数は、

15年度:27件(45%)、16年度:17件(40%)と概して高い水準にある。

ということで、東証1部企業の本社だけでなく、その子会社・関係会社で発生した件数が多くなっているということが考えられる。

不適切会計処理には会計処理ミスと粉飾の2つの要素が含まれ、会計処理ミスに関しては上述の適切な会計処理のための体制不足が要因として考えらえる。一方で、粉飾については、不正はえてして『死角』で発生しやすいことを裏付けている。

事業における死角とは、

・主軸事業でない

・本社でない

 

簡単に言えば、関わっている人間が少ない、と言う状況を意味する。

つまり、本社から見て目が届きにくい状況である子会社、特に海外子会社はそのリスクが高いと言える。最近の事例としては亀田製菓のタイ子会社の例が挙げられる。

www.nikkei.com

『タイ子会社の不適切会計問題に関する調査報告書を公表した。報告書では2010年12月から17年9月にかけて棚卸し資産が累計で約6億円過大に計上されていたと認定。原因として子会社の経理部以外の第三者によるチェック機能が働かないなどガバナンスや内部統制が不十分だったと指摘した。
 独立調査委員会の報告書によると、不適切会計は現地子会社のタイ人の経理部長が主導したと指摘。同経理部長は独立調査委の調べに不適切会計をした理由として「赤字が続くと会社が閉鎖されてしまうと思った」と話しているという。』

 

海外子会社の粉飾を含む不祥事の要因と対策については以前ブログで指摘した。

不適切な会計 最近の傾向と抑制のキーは? - 溝口公認会計士事務所ブログ

 

コーポレートガバナンスコードの浸透によりに少なからず企業(経営者)の不適切な会計処理を含む不祥事の防止や早期摘発に対する意識が高まっていることが、こうした不適切な会計処理の社数・件数が増加につながっているとの分析もある。

とすると、当面は潜在的な発生件数は横ばいであったとしても、摘発され発覚する件数が増加する傾向が続くのだろうか・・・

森社長の赤字の説明に思う 【オフィス北野の例】

tablo.jp

FBにも簡単に上げたけど、事務所ブログにも上げておく。

 

週刊新潮に掲載されたオフィス北野問題(?)に関する記事。

たけし軍団の声明に対する森社長の反論を読んでの感想。

 

疑問1~4について、それぞれ森社長の反論が書かれているが、個人的に気になったのは疑問4

『疑問・4 「昨年9月の決算で、オフィス北野は500万円ほどの赤字を計上してしまった。会社の売り上げは24億円程度ありますから、経営を根本から揺るがす赤字ではありませんし、そもそも「アウトレイジ最終章」(昨年10月公開)の製作費は既に出ていっていたの対し、映画に関する売上げが入ってくるのは半年ほど後になるというタイムラグが生じます」という部分。出版界でも原稿料の支払いは「20日締め、翌々月末払い」というのが浸透しており、タイムラグが生じるのは仕方にないとは言え、これは説明すれば納得できるものではないでしょうか。が、「たけしさんは自分が休みなく働いているのに」と怒りが収まらず、納得しません。これなども「愛人が裏で糸を引いているのでは」と邪推させる文章です(あくまで邪推です)。』

 

どのくらいの人がこの説明に納得するのだろうか?

 

もちろん、それは単純に言い訳しているとか、何となく怪しい、ということで納得しないのではなくて、森社長の主張は会計的には反論になっていないと思われる。

 

森社長の説明は、おカネの出入りについてであり、たけし軍団の指摘は(オフィス北野が)赤字だという点だ。

会計的に言うと、たけし軍団損益計算書(P/L)の赤字を指摘しているのに対して、森社長はキャッシュ・フロー計算書の資金収支の説明(反論)をしていると思われる。

 

オフィス北野の決算書の詳細は知りえないが、非上場会社とは言え、20数億円の売上の会社が現金主義で決算書を作成しているとは考えにくい(法人税法上もあり得ないだろう)。

 

映画ビジネスの会計処理については、以下を参照して欲しい。

www.shinnihon.or.jp

映画製作費は、企画段階、プリプロダクション段階、プロダクション段階のいつから資産計上するかの論点はあるが、各段階の各アクションに係ったおカネの支払いと同時にP/Lの費用とされるわけでは無く、資産計上される。

資産と言っても、棚卸資産、有形無形固定資産、あるいは投資有価証券等と形態は異なる場合があるが、ややこしくなるのでここでは簡略化して、映画製作のために支払ったおカネが即費用となるのではなく、資産とされるという点に留める。

では、その資産はいつ費用となるのかというと、映画という映像作品から得られる収益に対応させて費用化する(費用収益対応の原則)。

具体的な費用化の方法としては、映像作品の将来の予測収益に対応させて償却(漸次費用化)する方法もあれば、一定期間(例:2年)で償却という方法もある。

 

対するに収益はどうか。

映画興行会社、配給会社の例が書かれているが、細かい点はわきに置いて、例えば『興行収入は、当日券、前売券、優待券などのチケットが劇場に着券した時点で認識される仕組みになっており、それぞれのチケット単価に入場人数を乗じた金額で計算されます。』

要するに、実際に映画興行会社等におカネが回収された時点で売上が上がるわけではない。配給会社における配給収入も同様だ。

 

オフィス北野が映画ビジネスの中で具体的にどのドメイン(制作会社、映画興行会社、配給会社)に属しているかの詳細は知らないが、いずれであったとしても、P/Lの売上、費用の認識タイミングとそのためのおカネの出入りは必ずしも一致しない、ことが理解できると思う。

ザックリ言うと、森社長が主張される”タイムラグ”はおカネの出入りについてであり、損益ではできるだけ売上と費用のタイムラグを無いようにしているのである。

 

簡単な例を示すと・・・

映画製作費 増額100は当期に支払

映画興行収入 総額200は当期に放映(売上)するが、来期に回収

とすると、

 

     当期   来期

利益    100    無し 

 

おカネ  △100    200

 

となる。

たけし軍団が指摘してるのは、上段である当期の利益(設例では100)が赤字なのはおかしいということであり、森社長が反論しているのは、下段の当期のおカネが赤字(設例では△100)だけど来期に200が回収されるから問題ない、ということで指摘に対する反論になっていないということだ。

 

会計に明るい人であれば一見してオカシイと気づく点であるが、一般的にはおカネの出入りと損益とを混同してしまうことは少なくないようだ。

 

とはいえ、世間から注目されるオフィス北野の内乱。

たけし軍団の声明に対しる森社長の満を持しての反論(5時間も!!)。

専門家のサポートも得て、当然に準備に準備を重ねたことだろう。

大体それだったら5百万円ぽっちの赤字で済むわけないだろうと思うのだが・・・

 

それがこれか、と思うと、

一事が万事そういう感じなのかなあ、

と思えてしまうのだった・・・

 

 

銀行の貸倒引当金減少は善か?に思う

www.nikkei.com

 

銀行が貸倒引当金を減らしている。全体の残高は不良債権問題でゆれた1998年の5分の1、いまやバブル期と同水準にまで下がっている。戦後2番目の長さの景気拡大を背景に融資先の経営改善が進んでいるなら当然だが、どうもそれだけではない銀行の事情も絡んでいるようなのだ。』

 

本日、日経朝刊、銀行の融資先に対する貸倒引当金が減少しているとの記事。書かれているように、銀行の貸倒引当金が減少する理由は大きく2つ。

 

① 銀行の支援や企業自身の努力で経営状態が上向き、リスク区分は要注意先から正常先へと改善したため

② 企業の中期的な成長を見ようとせず、新規事業等への融資を抑制したため

①の場合は、企業の成長とともに銀行の融資も増加するが回収リスクは低下した結果、

②の場合は、企業の成長も停滞し銀行の融資も減少する、いわゆる縮小均衡ということだ。

 

f:id:tesmmi:20180402170603p:plain

 

記事が問題視しているのは、特に②の場合。

『銀行として企業の経営リスクを減らす役割を果たしているなら「良い引当金減少」。ただ、企業の中期的な成長を見ようとせず、有望な事業の芽を摘んでいるのであれば「悪い例」といえる。 「善玉か悪玉か見極める必要がある」。地域の魅力研究所代表で金融庁参与でもある多胡秀人氏は、引当金がなぜ減ったのか中身をみるべきだと話す。取引先企業への融資を渋ったり引き揚げたりして、減少している場合もあるからだ。』

また、銀行の業績に対する影響へも指摘は及ぶ。

引当金の計上は銀行には費用になり、利益を下押しする。日銀のマイナス金利政策の下、利ざやは大幅に縮小し、「金利0%台」の融資が全体の6割超。マネックス証券の大槻奈那氏は「0%台でしか貸せないなら、リスクの低い融資先に絞るのは銀行には合理的なこと」とみる。リスクがある企業には貸さず融資を引き揚げる。これが引当金減少の隠れた要因だ。』

 

と、貸し渋り貸しはがしを指摘しておいて、

 

『「自らの顧客基盤を失い、ビジネスモデルの持続可能性にさらに悪影響を与える」。金融庁リスクを過度に避ける銀行の姿勢に警鐘を鳴らし、取引先の育成・支援に取り組むよう促す。』

 

もっと、ちゃんと融資しろ、と。

 

自分のことを優先して企業を痛めつけるとは何事か、金融機関としての社会的な役割をしっかり果たせ、という論調。

 

もっともといえばもっとも。

バブル後の長引く不況時にも銀行による貸し渋り貸しはがしを原因として中小企業をはじめとする多くの企業が倒産に追い込まれ、これが更なる不況を作り出したともいわれる。こうした経緯もあって、こう突っ込まれると銀行としても釘を刺された形になるのかもしれないし、社会全体としてもそうした印象を持つかもしれない。

 

しかし、である。

銀行からすれば、

 

貸せるものなら貸すよ!

 

という思いもあるのではないか。

営利企業である以上儲けは追求すべきだし、金利手数料で儲ける銀行からすれば融資はできるものならしたいだろう。実際、優良会社には融資の話は事欠かない(逆に需要はないのだが・・・)

 

もちろん、最初から結論ありきの融資引き上げや貸し渋りは良くない。

 

とはいえ、どんな企業に対しても積極的に融資しろというのも無体な話だ。回収困難と判断される分かって融資すべきでないし、そんなことして業績を大きく悪化させたらそれこそ株主から訴えられかねない。

 

例えば、

これまで継続的に赤字の会社が来期から黒字化します

新規事業を第2の会社の収益の柱とします

等々

 

熱心に説明されても、その根拠が合理的に説明されているか

 

という点に企業側が対応できているのだろうか?


融資を断わられ、

 

銀行は当社の事業の新規性や成長性を理解していない

銀行は過去の実績しか評価してくれない

 

という意見も耳にするが、ある意味それは当たり前。

 

銀行は事業の専門家ではないし、

しかも利害は対立する

批判的に見るのは当然だろう。

 

それを批判するのは簡単だが、それだけでは結果は変わらない。

銀行が気にする点を企業が合理的に説明できているかどうかを再考すべきだ。

 

一例であるが、

何故、売上が成長するのか?

⇒何を売るのか?(製商品)誰に売るのか?(顧客)どこで売るのか?(地域)どのように売るのか?(チャネル)等々

結果としての売上高が成長するというのであれば、当然にこれらに変化があるべきで、これらの点に対する説明もなく単に売上高の10%成長と言われても

個人的には、疑問しか浮かばない。

 

また、その販売を支えるための費用は、資産は?特に、 これまでとは異なる事業やチャネルでの販売となれば、当然、これらにも変化があるだろう。

 

そして、そのための資金はどの程度必要になるのか?単に運転資本が苦しいからとりあえず貸して欲しいと言われても、一体いくらの資金が必要なのかも分からない企業にはとてもじゃないが恐くて貸せない・・・

 

そして、こうした企業の事業戦略が財務予測(予測財務諸表)となって数字に落とし込めているか、という点が重要だ。

いくら熱心に言葉で説明されても、発する側、受ける側によって温度差はあるし、計画のいい面ばかり説明されても逆にリスクが気になるし、予測の幅によって売上、利益、そして資金需要をどの程度変動するのか、といった点を言葉よりも客観的な数字で表現する必要がある。銀行も組織であり、融資担当者の一存で融資判断がされるわけではない。・・・と社長が熱く語っています!で決裁が下りるわけもないことは容易に想像がつくだろう。

 

事業計画の合理性もさることながら、事業計画を数字に落とし込む点において、

人材やスキルが十分でない企業が少なくないように思われる。

金融庁は、この点の育成・支援も念頭に置いているかもしれないが、銀行だけに求めるのであればそもそも人材の確保からして難しいだろう。仮に可能としても、当然にそのためのコストが貸出金利へ反映されることになる。

 

事業に必要な資金の調達が企業にとって重要であるならば、技術、販売、製造等と同様に財務・会計の人材の調達や育成に注力すべきだと思う。

結構、軽視されがちに思えるし・・・

 

銀行の貸倒引当金の減少要因の1つである

『企業の中期的な成長を見ようとせず、新規事業等への融資を抑制したため』

は銀行だけの問題としてしまうと事態は改善しないのになあ、

 

と記事を読みながら思うのだった。

 

親子上場って有なの、無しなの? 【ソフトバンクの例】

www.nikkei.com

 

『世界で企業の新規株式公開(IPO)のルールが骨抜きになるリスクが高まっている』

との日経記事(2018/3/19)

 

ソフトバンクグループ(SBG)のソフトバンク(携帯子会社)の上場方針の公表等を例に、親子上場に対する規制が緩和される可能性を示唆している。

 

親子上場とは、その名の通り、親子そろっての株式上場を指す。

問題となるのは、子会社の株式上場だ。

 

親子上場のメリット・デメリットとして一般的に挙げられるのは、

 

【親会社のメリット】

・子会社株式を市場で売却することによる資金調達

・子会社株式の市場価値向上

・子会社に対する管理負担の軽減(子会社の信用力向上による資金・人材調達)

 

【子会社のメリット】

・親会社から独立性が増すため、経営の裁量が増える

・従業員のモチベーションの向上

 

【親会社のデメリット】

・子会社に対する支配力が弱まる

・子会社の上場による情報開示

 

【子会社のデメリット】

・親会社への依存度が低下することによる営業力の低下、管理コストの負担

・子会社の少数株主の利益が不当に阻害される

 

これらのメリット・デメリットはどの立場からかによる相対的なものが多い。特にデメリットについては、上場のメリットのためのコストとして捉える方が自然で、それをデメリットとするのもどうかと思う。

また、親会社のメリットである子会社株式売却による資金調達についても、同じ会社が2度上場するようなもの、つまり資金の2重どりだ、という指摘もされる。

 

親子上場の最大の問題は、子会社のデメリットとして挙げた、

 

子会社の少数株主の利益が不当に阻害される

 

ことだろう。

 

この点、東証は例えば『2008年度上場制度整備の対応について』で、

http://www.jpx.co.jp/equities/improvements/general/tvdivq0000004iib-att/2008program.pdf

親会社を有する会社の上場は、上場制度として禁止するのは適切ではない、としながらも、少数株主との利益相反のおそれなどの内在する弊害や問題点があること、昨今の経営環境においては上場会社には本格的な連結経営が求められていることを踏まえれば、投資者をはじめ多くの市場関係者にとって必ずしも望ましい資本政策とは言い切れない、として、全国の取引所と協調して、実質的に一体の親会社及び子会社による上場を認めないことを明確にしている。

上場する子会社には親会社(支配株主)が存在し、親会社の判断によって子会社に不利な条件による取引を強要される、子会社から資金を吸い上げられる、上場後短期間で再度非公開化される等々、親会社以外の子会社の株主の権利や利益が不当に損なわれるおそれを指摘してのことだ。

 

『親会社と子会社が共に上場する親子上場は、株式持ち合いと並び欧米ではほぼ見られない日本独特の資本政策だ。親会社が自らの利益を優先し、子会社の一般株主の利益を損なう恐れがある。』

 

株式公開して上場会社になることをgoinng publicと言う。

公共の存在、社会の公器となるという意味だ。

理屈抜きにして、直感的にどこかの会社の子会社が上場会社になるって変だと思わないだろうか?

初めて耳にした時に、大人の事情はともかく、おかしな制度だなと感じたのを覚えている。

 

日本では、ソフトバンクとヤフー、NTTとNTTドコモ、キャノンとキャノンマーケティング、等々以前から親子上場する企業はある。世界的に見ても多い部類だろう。

世界では、ロシア、ブラジル、イスラエルにいくつか例は見られるが、世界的な大市場であるアメリカや欧州では見られない(というか僕は知らない)。

 

日本市場における外国人株主が増加するにつれて、

親子上場っておかしくね?

といった指摘の声が強くなり、2006年度をピークに減少傾向が続いている。日経記事によれば、

海外投資家からの批判も強く、2016年度末は270社と10年前のピークから3割減っていた。

とのことだ。

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ところが、だ。

潮目が変わりつつあるとのこと。それも、世界的に。

 

日本では、

『半面、IPOを逃す恐怖もちらつく。ロンドン単独上場を選ばれてしまうと「自国の大企業に見切りをつけられたとして、世界からの評価が下がってしまう」(東証幹部)。東証の苦しい胸の内を見透かすように、SBGは条件緩和を迫る。東証には上場企業の子会社が1部に上場する場合、親会社は持ち株比率を65%未満に下げるルールがある。経営の重要事項を単独で決められる「3分の2以上」に達しないようにするためだ。ただ上場を目指す企業が海外に上場している場合は緩和されることがある。SBGはソフトバンクのロンドン同時上場でこの例外規定の「ウルトラC」を狙っており、上場後も7割程度を持ち続けたい考えのようだ。』

この動機と屁理屈、と苦笑いがやっと・・・

事情は分からなくもないが、会社と言い、東証と言い、

恥も外聞もないとはこのことか。

 

そして、この流れは日本(東証)に限った話ではない。  

香港取引所、シンガポール取引所、ロンドン証券取引所、世界の取引所が時を同じくしてルール緩和に向かっている。

 その背景には、世界的なカネ余りがある。現在のIPOはもはや成長資金の調達が目的ではなく、既存株主の換金場所の確保へと変わってきたという。

また、

『18年1~3月の世界のIPOによる調達額は337億ドル(16日時点)。かたや世界IT大手8社は同期間にこれに迫る249億ドルの買収を実施した。上場企業の非公開化も増え、17年末の日米英の上場企業数は計約1万1500社と20年前から約2200社減った。』

 

要するに、投資機会の減少が続く投資家にとってはそうは言っても親子上場は1つの投資機会、そしてもはや公共の利益を守る存在から営利企業に変貌した取引所にとっても取引は多いほどありがたい・・・

 

そういう事情もあってのルール緩和だろう。

『投資家と企業の間に立って市場の規律を保つのは本来は取引所の役目だ。「基準にそぐわない企業のIPOを認めない毅然とした態度が求められる」(野村総合研究所の大崎貞和氏)。』

 

願わくば、証券取引所の矜持に期待したい。

もっとも、証券取引所だけの問題ではないのだけれど・・・